国民の理解を得られないまま強化される法的措置

NHKは2025年10月、本部に「受信料特別対策センター」を設置し、未収世帯への支払督促という民事手続きを強化した。2026年度の計画では、2000件超という、前々年度比20倍規模の法的措置を断行する構えを見せている。

背景にあるのは受信料の未収世帯の増加だ。19年度には72万件だった未収世帯が、24年度には174万件と約2.4倍にまで膨れ上がっている。

この未収世帯の増加こそが、NHKに対する国民からの偽りのない評価である。会長の言う「最上の制度」が、国民の納得を得られていないという何よりの証拠ではないだろうか。

NHKが牙を剥いたのは一般家庭だけではない。3月12日、NHKは実に7年ぶりに、受信料を滞納しているホテル運営会社2社(北海道・福岡県)に対し、計約2200万円の支払いを求める民事訴訟を提起した。

井上会長はインタビューでも「今後は事業所向けも強化する」と明言。受信料の滞納事業所はこの5年間で倍増し、24年度末で約2万件に達している。

ホテル客室のテレビも、公用車のカーナビも、設置の第一目的が「NHKの視聴」でないことは明白だ。それにもかかわらず、NHKは「受信できる設備がある以上、一律に徴収する」という一見正当性のある放送法の解釈を都合よく持ち出して、一歩も引かない。

納得できない点は、その徴収プロセスの不透明さ

納得できない点は、その徴収プロセスの不透明さにある。未契約が発覚した警察や自治体に対しては「丁寧な周知」という対応に留めながら、民間企業や一般国民には「7年ぶりの提訴」や「前々年度比20倍の督促」といった強硬策をとっている。明らかに行政と民間とでは、対応に差が生まれている。

この明らかな二重基準こそが、井上会長の語る「公平な負担」という言葉の信憑性を根底から覆している。NHKは「自主的な支払い再開が増えた」と成果を強調するが、それは制度への理解が深まったからではない。裁判という権力行使を恐れた、いわば「訴えられるかもしれない」という心理的圧力による結果ではないか。

井上会長はインタビューで、スクランブル化を否定する文脈において、「契約をいただいている方のほとんどは、実際にはNHKをご覧いただいている」とも発言している。