郊外ではインフレに賃上げが追いついていない

※画像はイメージです
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郊外におけるマンション販売の苦戦はデータからも明らかだ。不動産経済研究所のデータによると、25年に販売された新築マンションのうち、初月契約率が好調の目安となる70%を上回ったのは郊外では千葉だけで、神奈川は62%、埼玉は59%と、明確に売れ行きが鈍っていることがみてとれる。

対照的に、都心6区(千代田、中央、港、新宿、文京、渋谷)では71%と、依然として需要に対して供給が追いついていない状況だ。

背景にあるのが、格差の拡大だ。「プラウド」を手掛ける野村不動産が2月に実施した報道機関向けの説明会で公表した資料によると、同社の顧客のうち、世帯年収が2000万円以上の比率は26.9%と、過去3年間で2倍以上に増加。株価や不動産価格の上昇という追い風もあり、都心エリアの予算は増加が続いている。

一方、賃金上昇の恩恵を受けているのはあくまで一握り。日本の企業の9割以上は中小企業であり、これらの企業の賃上げは限定的だ。特に郊外ではインフレに賃上げが追いついていない人のほうが多い。

郊外では新しいマンションが供給されないという事態

現在のような金利上昇局面において、多額の住宅ローンを背負うことに躊躇する人もいる。建築コストという原価が上昇しているにもかかわらず、販売価格には明確な上限があるのだ。

都心部では2億円近いタワマンでも分譲前に完売することも珍しくない一方、郊外のマーケットでは大手デベロッパーが分譲する大規模新築物件ですら、5000万円以下の部屋の販売に苦戦。

そのため不動産デベロッパー各社は採算が見込みにくく売れにくい郊外ではなく、価格転嫁容易な都心エリアの高額物件に集中するようになっている。

野村不動産の説明会に参加した全国紙の記者は「すでに都心にマンションを持って多額の含み益を抱えている人の住替えが増えているなど、都心エリアの話ばかりだった」と振り返る。

こうした状況下、郊外では新しいマンションが供給されないという事態が現実化するだろう。前出のA氏は「企画する際、郊外でも値上げに耐えられるエリアとそうでないエリアで分けて考えるようになっている」と明かす。