ダウンタウンのお笑いに救われる
「テストだけは受けてくれない?」
母親に土下座して頼まれ、しぶしぶ中間テストの日に登校した。家庭教師に習ってはいたが、問題を見ても全然わからない。一日中机に突っ伏して寝て、白紙同然で出した。
「ああ、人生終わったな」
学校に来ない太郎さんを心配して、1年のときの親友が友人を誘って家まで来てくれた。6畳の自室に多いときは7、8人が集まって、悪ふざけしたり、女の子の話をしたり。その中の1人が持ってきてくれたのが、当時ベストセラーになった松本人志の著書『遺書』だ。
「読んだその日から、すごい影響を受けて。『お笑いは凄い』『俺は天才』という言葉が刺さっちゃって、一気に“松本信者”になりました。松っちゃんみたいな、お笑い芸人になりたいと、ダウンタウンのビデオを全部買って、ずっと研究してました。
うんとぐらぐらして、不安なときって、強くて自信がある人に惹かれるじゃないですか。不登校になって将来が暗かったところを、あの人の作ったお笑いの作品で、だいぶ救われていたんじゃないですかね」
不登校児を受け入れる高校に進学したが、すぐに行かなくなる。心配した親戚が「お寺の生活を1か月してみないか」と勧めてくれた。
「突拍子もない話だから、断ってもおかしくなかったけど、なぜかOKしたんです」
両親と3人で京都にある禅宗のお寺に着くと、威厳たっぷりの和尚さんが出てきた。長く伸ばしていた髪も「坊主にしてもらう」と厳しい口調で言われ、「緊張してビビった」という。
山門まで両親を見送りに行くと、母親が泣きながら「一緒に帰ろう」と手を差し出してきたが、太郎さんは半べそをかきながらも、断った。
「坊主にされるのは嫌だったけど、1か月だけなら、まあいいかと。将来への不安がなくはなかったので、何か変わるかもしれないという希望もあったんですかね」

















