「野菜を切ったり、揚げ物やラーメンを担当していました」
16歳の終わりに帰国した中谷潤人は、恩師ルディ・エルナンデスの教え子がトレーナーを務める神奈川県相模原市のM.Tジムへ入門した。2015年2月にプロテストを受験し、同年5月にデビュー。初戦では1ラウンドKOを飾り、このほど世界タイトル4階級制覇を狙ってモンスターに挑む。
プロ入りしたばかりの4回戦時代、中谷はジム近くの中華料理チェーン『バーミヤン』の厨房で約2年間アルバイトを続けた。
「調理係です。野菜を切ったり、揚げ物やラーメンを担当していました」
幼少期から父が経営するお好み焼き店を手伝っていた経験があったこと、さらに、父・澄人から「頭の回転を常に速くしておけば、ボクシングにプラスになる」と助言され、厨房で働くことを選択。
澄人は板前修行時代に「手元ばかり見るのではなく顔を上げ、お客様の要求を事前に察しなければ料理人は務まらない」と叩き込まれた。
中谷は小学生の頃から店で皿洗いや後片付けを率先してこなした。訪れた客が何を望んでいるのかを自然に察して動く姿を父は覚えており、さらにその感性を研げと告げたのだ。
中谷は、厨房での日々はボクシングに影響していると語る。
「お店の中で何が足りていないか、どこに入ればスムーズに動くかを意識して働いていましたが、今、当時の経験がリングで無茶苦茶生きています」
その「先読み」と「観察」は、リング上での判断力にそのままつながっている。試合では対戦相手の表情や仕草、コーナーへ戻るときの歩き方、インターバル中の呼吸や顔つきなどを注視。何を嫌がっているのか、次にどんな変化が出るのかをつねに観察している。
4回戦の下積み時代に培われた“先を読む目”と“状況判断の速さ”が、世界3階級制覇を成し遂げ、さらにモンスター井上尚弥との東京ドーム戦を控える中谷潤人の強さの根幹となっている。













