「うちへの届け出の9割方はお宅だよね」
従来の性風俗業をはじめ、映像配信で利益を得ようとして活動を始めるのにも、警察署への届け出が必要だということだ。事務所の所在地はどこなのか、代表者は誰なのか、どのような事業なのかなど、細かな規約に則った書類の作成が求められる。しかし、専門性が高いため、間違いや必要事項が抜け落ちたりすることが多い。
一つ訂正を求められると、再提出し、受理されるまで1週間以上の遅れが出てしまう。新規オープンを謳っていた店舗は、出だしから致命的なダメージを受けることもある。
そんなミスを取り除いて、事業立ち上げの手伝いをしようというのが、髙村の新たなビジネスとなったのである。
月曜から金曜までの平日、高村は日本全国を駆け回っているという。そこで、私は髙村に同行取材をお願いした。
2025年6月下旬、東京・新宿警察署で髙村と待ち合わせた。この日も髙村は茨城、千葉、東京と動き回り、新宿署は4カ所目だという。受付で入館手続きを済ませ、担当部署である生活安全課へ。
扉の横にあるインターフォンを鳴らし、担当者が出てくるのを廊下で待つ。1週間前に提出した3件の書類の審査が通ったかどうかを確認するためだ。内訳はデリヘル2件、映像送信型性風俗特殊営業1件の計3件だ。
担当者が15分ほどで出てきて、書類を出し、全て審査が通ったことを伝える。確認書と呼ばれる書類を受け取り、用件は済んだ。実にあっけなかったが、「一般的には、何かしらの修正が加えられることが多くて、こんな“満額回答”はほとんどないんですよ」と髙村は言い、してやったりの表情でにっこり笑った。
髙村の言葉を証明するかのように、私たちより先に来ていた人は、担当者とまだ話している姿が廊下で見られた。
新宿署は、日本最大の歓楽街、歌舞伎町を所轄としている警察署だ。その新宿署に高村は月に何度も通っている。
「先日も新宿署の人と話していたら、『うち(新宿署)への届け出の9割方はお宅だよね』って言われました」
少し照れくさそうに、しかし誇らしげに髙村は語った。そして、こうも言う。
「夜の業界では、法令を遵守してきちんとやっている人たちがたくさんいる一方、法律をよく理解せずに営業して、風営法違反で逮捕される人もいます。僕は、そういう人を無くしたいと思っているんです。
間違いのない届け出や基礎的な法知識を持っていれば、つまらない逮捕者は少なくなる。そんな業界になっていくお手伝いを少しだけでもできたらって思っているんです」
性風俗業を支える人たちは、何も経営者やスタッフだけではない。そのなかには、髙村のような士業の人もいるのだ。そして、髙村以外にも弁護士や税理士などもいる。
つまり、性風俗業は想像以上に裾野が広く、さまざまな人が関わっているということだ。そして、それぞれの立場で熱意を持って日々活動を続けている人がいることを改めて思い知らされたのである。
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文/山田厚俊













