夜の業界と行政の懸け橋になりたい

修士論文は「歓楽街を持つ地域の安心のまちづくりモデルの創出」。案内所で働いてきた経験を基に、風俗業界と行政、夜の街と行政の懸け橋になるためにはどうしたらいいのかという内容だった。

実践してきた内容は、「ソーシャル・イノベーション」。夜の街の変革だった。たとえば、店舗側の人間がたばこのポイ捨てをする。酔客も平気で捨てる。それを髙村は“拾う側”になった。行政には防犯カメラの設置要望などを出した。客引きやぼったくり防止の運動などを積極的に行ってきた。すると、区議や町内会の人たちが応援してくれるようになった。

このような実践報告を基にした論文は、髙村の“決意表明”でもあった。具体的で公益性が高い髙村の論文は、日景のアドバイスを具現化したものとなり、最優秀論文に選ばれた。2019年3月のことだった。

金儲けから街作りへ──。MBAを取得した髙村は、「次のステップ」に行政書士の資格取得を目指すこととした。

「夜の業界と行政の懸け橋になるために、国家資格を取りたかった。具体的に言えば風俗営業法、風営法手続きをやるためです」

夜の業界での実務を経て、資格取得のために勉強に打ち込むことに
夜の業界での実務を経て、資格取得のために勉強に打ち込むことに

こう考えた高村は、自身が経営する案内所事業を知人に譲渡し、行政書士の資格取得のため勉強を始めた。大学院を卒業した2019年のことだった。

翌年11月、高村は初めての試験に見事合格し、2021年3月に事務所を開設する。「夜のまち専門行政書士」という商標登録も済ませた。風営法、特に性風俗業界に特化した日本初の行政書士の誕生だった。髙村は語る。

「風俗といっても、大きく分けて2つあります。バーやスナック、キャバクラといった飲み屋さん系のものと、性風俗。前者の飲み屋系専門の行政書士はたくさんいますが、僕は後者の性風俗専門。この分野、性風俗アダルト業界に特化した専門行政書士は初めてのはずです」

その性風俗も多岐にわたる。店舗型と呼ばれるソープ、箱ヘルなどがあり、派遣型ではデリヘルなど業態は多種多様だ。それぞれに精通し、対応しなければならないのである。

加えて、近年、届け出が増えているのが、アダルト業界だと髙村は語る。

「かつてのAV、アダルトDVDではなく、いわゆる素人の個人が、自ら撮影してネット上で配信する形のものです。これは『映像送信型性風俗特殊営業』というのですが、これにも風営法上の届け出が必要なんです。ものすごく増えています」

たとえば、「ファンティア(Fantia)」というサイトがある。漫画や小説、音楽、映像作品など、さまざまな表現活動をしている人が活用している“クリエイター支援プラットフォーム”だ。

こういったサイト上で動画をアップし、月額制で課金すると見られるという仕組みである。いわゆる裏垢界隈で知られる人たちが、よく利用しているサイトである。