推し選手のタオルが呼び込む「シンクロニシティ」

ホームである甲子園球場での試合の際、一塁側やライトスタンドの客席がテレビ画面に映し出されたとき。「タオルを掲げているファンが、ずいぶん多いな」と感じたことはありませんか?

新刊『「幸福感」に満たされたいなら阪神ファンを知りましょう マーケッターが気づいた「効果と法則」』で行なった、阪神ファンの女性(TORACO)約3000人へのアンケート調査でも、およそ9割が「(推し)タオルを持っている」と答えました。本アンケートは、無償で有志の方々がご協力くださったので、もともと熱心なファンが多いとは思いますが……。それにしても、9割は相当高い割合ですよね!

またタイガースの場合、推しタオルのバリエーションが多いことでも知られています。選手の名前や写真入りの王道モノのほか、各選手の決め台詞、たとえば2025年に「50試合連続無失点」の日本新記録を作った石井大智投手の「勝ちマッスル」(筋トレが趣味)や、2026年から横浜DeNAベイスターズでプレーするデュプランティエ投手の「ぼちぼちいこか」(彼が覚えた関西弁)など、その種類は枚挙にいとまがありません。

球場でタオルを掲げたり、推し選手のユニフォームを着たりしていると、何が起こるか。黙っていても、周りの見ず知らずの人々に「自分の推しは◯◯だ」と伝わりますよね。それこそが、自己開示効果です。

2025年シーズン、クライマックスシリーズDeNA戦後の阪神ファンの様子(写真/共同通信社)
2025年シーズン、クライマックスシリーズDeNA戦後の阪神ファンの様子(写真/共同通信社)
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また、自分の嗜好や属性、経験などを相手に伝えると、それを知った人の多くが「自分も何かを伝えよう」と考えやすくなります。これが返報性の原理と呼ばれる概念で、人は相手から何かを受け取ると、自分もお返しをしなければという気持ちになりやすい。

だからこそ、自己開示した人とされた人との間で、心の絆が深まる、とされています(※『影響力の武器』ロバート・チャルディーニ/誠信書房)。

たとえば、私のように取材を仕事とするような人々や、私の母のように、人の悩みに寄り添うカウンセラーなどは、相手との対話をスムーズに展開しようと、よく「自分の弱みや恥ずかしい体験」を話します。

そうすることで、相手に「この人になら、自分を開示しても大丈夫」だと胸襟を開かせ、信頼関係も築きやすくなるからです。