スラム化するマンションの未来
修繕積立金の値上げ、自分は大丈夫だと思う人もいるでしょう。企業年金もあるし、ローンの完済も間近。退職金があればこれを運用していけば恙ない日々を送れるはずというものです。ところがマンション住まいの場合、自分の家が大丈夫であっても、マンション内に住む大多数の住民が同じように大丈夫でなければ、ものごとがうまく運ばないようになっています。
大規模修繕の決議は管理組合における特別決議が必要な場合には区分所有者総数かつ議決権総数の4分の3以上の賛成が必要になります。マンションで平穏な生活を送っていくにあたって大規模修繕は不可欠なものです。ところが実際に大規模修繕工事の実施が付議されると、築年数の経過したマンションほど紛糾する傾向にあります。
最も揉めるケースが、工事費の値上がり等が原因で必要な修繕工事を行うにあたって積立金だけでは足りずに区分所有者が応分の負担を求められた場合です。築年数の経過したマンションほど年金に頼る生活をしている高齢者から「そんな負担はできない」と反対意見がでます。高齢者にとっては必要最小限の工事さえしてくれればよくて、自分はもうわずかで死ぬだろうから自ら追加負担してまで工事する必要性は感じないし、お金は今後の生活のために必要な程度しかないのでそもそも拠出できないというものです。
また管理組合で借入金や住宅金融支援機構のマンションすまい・る債で賄うケースもありますが、管理組合役員も高齢化して借入についてなかなか判断できないケースが目立ちます。
今は50歳代でこうした内容について理解を示せたとしても、自分自身が70歳代、80歳代になったときにはたして同様に判断できるかといえば、自信がない人もいることと思います。つまり将来を見据えて、現在住んでいるマンションに持続可能性があるのかどうかを現在の目線だけでなく、将来を見通して判断していくことが重要なのです。
今後、日本においてもマンションスラム化という社会問題がかなり深刻になると考えられます。マンションの一部で大規模修繕が実施できず、適正な管理も行われないまま放置されれば、マンション内の環境は悪化していきます。環境悪化を嫌気した住民から退去が続く。主を失ったマンション住戸は、売却はおろか賃貸の用にも供することが難しくなり空き住戸化していきます。空き住戸の増加は更なる住民の退去を促し、やがて空き住戸に不逞の輩や不法滞在の外国人等が巣くうようになります。
世界的な傾向として共同住宅の空き住戸率が3割を超えるようになるとスラム化が急激に進展するといわれます。こうしたマンションになってしまうと、今までのような平穏な生活を送れないばかりか、あるはずだったマンションの資産価値も失われていくことになります。
自分が住むマンションに将来、そうした状況に陥るリスクがないか、上昇していく管理費や修繕積立金に対応していけるだけの住民構成であるかどうか、見極める必要があるのです。
文/牧野知弘













