誰が炎上を呼び寄せるのか?

炎上に参加する人は、見た目のプロフィールだけではわからない内面の特徴を持っている。調査の結果、特に目立ったのは「協調性が低い」と「開放性が高い」という二つのパーソナリティ特性だ。

「協調性が低い」とは、周囲との調和を保つよりも自分の考えや利益を優先し、他人に不満を持ちやすく、時にはもめごとを起こすこともいとわない傾向を指す。

例えば、自分が「人に気をつかう、やさしい人間だと思う」という問いに否定的な回答をする人が、炎上参加者に多い。他人の行動が自分の価値観や規範から外れていると感じたとき、強い違和感や怒りを覚え、それをネット上でぶつける。この姿勢は、炎上という現象を支える燃料の一つになっている。

一方で、「開放性が高い」というのは、新しいことや変わった考えへの関心が強く、知的好奇心や想像力が豊かなタイプを指す。

こうした人は日々ネット上の新しい情報に触れ、そこに積極的に関与しようとする。自分と異なる意見や価値観に出会う機会も多く、それが時に対立の火種になる。新しい話題を追いかける性質と、異論を看過しない姿勢が組み合わさることで、炎上への参加確率は高まる。

さらに、社会や他人に対する考え方にも特徴がある。

「世の中は根本的に間違っていると思う」「自分はもっと評価されてしかるべきだ」「相手の意見が間違っているなら、どこまでも主張して相手を言い負かしたい」といった項目に当てはまる人の割合が、炎上参加者では明らかに高かった。

つまり、社会への不満と自己評価の高さ、そして論争に勝ちたいという強い意志が、炎上参加の背景にある。他人を論破すること自体が目的化し、意見の違いが許容できなくなる。この心理は、匿名性と拡散性を備えたネット空間で特に顕著に表れる。

匿名に隠れて過激な意見をする人も ※写真はイメージです(写真/shutterstock)
匿名に隠れて過激な意見をする人も ※写真はイメージです(写真/shutterstock)
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こうした特徴は、悪質クレーマーの性質と驚くほど似ている。関西大学の池内裕美教授の研究では、悪質クレーマーには高学歴・(元)高所得で社会階層が高く、定年退職後の人が多いらしい。また、自尊感情が高く完全主義的な傾向が強いこと、社会的不満が高いといった特徴もあるようだ。企業や組織に対し、自らの経験や地位を背景に過剰な要求を突きつけ、相手を言い負かそうとする。

その場が店頭からネット空間に移っただけで、根底にある心理や行動パターンは近い。違いがあるとすれば、炎上参加者の方が年齢層は若く、インターネットに日常的に触れている点だろう。

結局のところ、炎上参加者は決して遠い存在ではない。職場の同僚、SNSの友人、自分自身の中にも、協調性の低さや開放性の高さ、社会への不満や攻撃性といった要素が潜んでいる可能性がある。実際、職場のパワハラ・セクハラ問題などは後を絶たない。それらが特定の状況で組み合わさったとき、誰もが「炎上の火種を投じる側」になり得るのだ。

炎上で世論はつくられる――民主主義を揺るがすメカニズム
山口真一
炎上で世論はつくられる――民主主義を揺るがすメカニズム
2026/1/8
990円(税込)
208ページ
ISBN: 978-4480077233

炎上・フェイク・陰謀論──
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刹那的な感情を煽る「ネット炎上」、真偽不明の「フェイク情報/陰謀論」の拡散は以前から問題視されてきたが、今や政治の世界を覆い、選挙結果を左右するまでになった。米大統領選から参院選まで、注目を集めることに最適化した極端な主張を持つ候補者が支持を得た。既存の政治を破壊するネットの論理とメカニズムとは何か。今後ますますスタンダードになるであろうSNSの暴力と、私たちはいかに対峙すべきか。近年、急激に進む政治とネットの融合を、若き第一人者が問い直す。

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【目次より】
はじめに──SNSが選挙を動かす時代

第1章 SNSが選挙を変えた年──2024年の衝撃

第2章 炎上のメカニズム──「言葉の刃」としてのSNS

第3章 フェイク──民主主義を揺るがす誤情報

第4章 規制で解決できるのか?──情報流通の社会的枠組みを問い直す

第5章 人類総メディア時代をどう生きるか?──未来への提言

あとがきにかえて──情報社会の未来を生きる私たちへ

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