駅ホームで営業を続けてきた奇跡のラーメン店
西新井駅のホームから一つの風景が消える。
東武スカイツリーライン(伊勢崎線)のホームに店を構える立ち食いラーメン店「西新井らーめん」が、3月31日をもって閉店する。
駅ナカでも駅前でもない、「駅のホーム」に存在するラーメン店。これは今や都内でも数えるほどしか残っていない。その中でも「西新井らーめん」は、知名度、歴史、そしてファンの記憶への刻まれ方において、間違いなく特別な存在だった。
ラーメン評論家の山本剛志さんは、この閉店を「一店舗の問題ではない」と見ている。
「ホームドアに代表される人員削減による駅ホームの簡素化は、鉄道業界全体の大きなトレンドだと思います」
この一杯の終わりは、駅における飲食店のあり方が変わってきたことを象徴している。
改札を抜け、階段を上り、電車を待つ。その待つ場所にラーメン屋がある。この光景は、実はかなり珍しい。立ち食いそばであれば、駅ホームにあることは決して珍しくない。
だが、ラーメンとなると話は別だ。それでも「西新井らーめん」は1969年の創業以来、半世紀以上にわたって営業を続けてきた。
「今は囲いをつけないと営業が認められないので、ホーム中央に飲食店を置くのは、もうかなり難しいですよね」
山本さんの言葉どおり、現在の駅ホームは余白を許さない空間になりつつある。その中で営業を続けてきた事実自体が、奇跡だったのかもしれない。
閉店が告知されて以降、店には連日、かつての常連や噂を聞きつけたファンが詰めかけている。聞こえてくるのは、惜別の言葉ばかりだ。
「え、なくなるんですか? 中高時代が足立区住まいで、めちゃ食べてました。寂しいです」
「ちょうど乗り換えの時に一本遅らせて食べてました。昔からある物がどんどんなくなってきて、寂しく思います」
「北千住から西新井には降りずに、らーめんだけ食べに行きましたね。地元の名店がなくなるのは寂しい」
どの声にも共通しているのは、「特別な店」ではなく「当たり前にそこにあった」という感覚だ。日常に溶け込みすぎていたからこそ、失われる瞬間に初めて、その重みが可視化される。













