「ご飯食べてしゃべってるだけ」の番組
ちなみにそのお店の名前は「あしびなー」。沖縄の言葉で「遊ぶ庭」を意味している。その思い出を、沖縄の店の中庭で話していることにグッと来る。
番組初回の最後に星野は、チック・コリアとゲイリー・バートンによる「Radio」を流した。1979年に発表された曲であるが、ピアノとヴィブラフォンの2人だけのデュオというのは、当時としても異色だったという。通常であればドラムやベースが入ったりする。
「2人だけでやるっていうのにすごい豊かさがあって。しかも『Radio』っていうタイトルなんですけど、2人でラジオで話しているような感じもする」
この曲の大半はアドリブで構成され、お互いを「観察」し、感じ取りながら展開していく。『星野源と松重豊のおともだち』もそうだ。台本は行く場所が書かれたペライチのみ。
「2人だけでただどっか行ってご飯食べてしゃべってるだけでいいの? って思う人もいると思うんです。ええんじゃい!って」
星野源はそう言い切る。
いま、世の中には刺激的なコンテンツがあふれている。テレビでもゴールデンタイムの番組なら秒単位でギチギチに情報が詰め込まれ、深夜番組ならばお互いが「お前は間違っている、俺が正しい」と“本音っぽい”言葉で主張し合うような番組が少なくない。それがSNSの時代と相性がいいことは間違いないだろう。
けれど、そうでない番組があったっていい。お互いを観察しながら、それぞれを尊重し合って好きな音楽のことをただ語りシェアする。そんなゆったりとした時間を作ることこそが、いまのエンタメの世界ではカウンターになり得る。
星野が「ええんじゃい!」と断言できるのは、そこに「愛」が流れている確信があるからに違いない。
文/戸部田誠(てれびのスキマ)


















