屋台時代の常連さんとはいまもつながっている
こんな話もある。ある日、「天下一品」のTシャツを着た青年がバイクを乗り回していて警察に捕まり、木村会長のところに電話がいった。
「おたくの従業員がバイクを乗り回しているぞ。引き取りに来てくれ」
会長が駆けつけると、そこにいたのは見ず知らずの青年だった。会長は「うちの従業員ちゃうがな」とその場では怒ったが、その青年とはつながり続け、いつしか「天下一品」の常連になった。
常連客でも業者でも、会長は一度ご縁があった人とはよほどのことがない限り縁を切らない。業者もよほどのことがなければ絶対に変えない。電球を1つ買うにも「勝手に業者さん変えたらあかんぞ」と従業員に言っていたという。
その代わり先方には無理も言うが、逆に向こうが助けてほしいときは、こちらが無理を聞くという付き合い方をしてきた。
お互いに商売をしているのだから、困っているときに助けたらいつか自分に返ってくる「ギブアンドテイク」の精神だ。商売とは人とのつながりであることをもっとも大事にしている。
成功するまでに受けたご恩を感じているからこそ、わかっているからこそ、成功してからもこうやって付き合い続けるのだ。
1号店を出させてもらった石材店とのご縁もずっとつながっている。亡くなった石材店の店主の息子さんや娘さんともずっとつながっていて、「天下一品」の社員旅行にまで招待していた。恩人のお墓参りも欠かさず、「この人がいなかったら、いまの『天下一品』はない」と感謝の念を忘れない。
自分が本当に苦労してきたからこそ、人の痛みがわかる。単に自分だけ儲かればいいとか、大きくなればいいということではなく、利他の心を持ち続けることが信条だ。
一代でラーメン屋をここまで大きくしてきた功績だけをみると、テングになってもおかしくはない。実際、そうみられがちだというが、現実はまったく違う。
会長はこのような言い方をする。
「わしができたんやから、だれでもできる。でも教えへんで」
木村勉会長のようにお店を築いてきた経営者はなかなかいない。「天下一品」は会長のこの想いが根底にあってこそ成り立っているのだ。
文/井手隊長 写真提供/天下一品













