「金太郎、専務に会う。」(集英社文庫・コミック版1巻収録)

会社のエレベーター文化。お偉いさんや取引先のために、ドアを開けて待つ。あるいは、同乗せずに一度降りる。今でも「あるある」な、このサラリーマン特有の空気。

そんな中、金太郎は言い切る。

「エレベーターを空けて、あんたを気持ちよくさせるのがサラリーマンだってんなら、サラリーマンなんて人種はクソの集まりだな」

またも金太郎が“サラリーマンのクソ文化”に正論パンチ! ――と、スカッと終わりそうで終わらないのが、『サラリーマン金太郎』第4話の面白さだ。

ここで登場するのが、創業から会社を支えてきた叩き上げの男・黒川専務。彼が出社すると、社員たちは自然と花道を作り、「おはようございます!」の大合唱。乗っていたエレベーターからも降りて、専務“専用空間”を用意するほどの超大物である。

だが、そのエレベーターにただ一人、降りない男がいた。そう、金太郎だ。

「ガラ空きだ。乗れますよ」

挑発とも取れるその一言にも、黒川専務は動じない。黙って同乗し、淡々と金太郎の所属と名前を確認する。

途中、他の階でエレベーターが止まっても、誰一人として乗ってこない。その異様な光景の中で、例の金太郎のセリフが飛び出す。

だがここで「権力者に一泡吹かせたぜ!」とはならない。黒川専務は、真正面から“正論”で返してくる。

「確かに正論だ。山の中で一人で生きていくならな」

と前置きして、サラリーマンという存在、社会の在り方を説く黒川専務。

人は一人では生きられない。社会を営んで初めて生きていける。だからこそ、上下関係があり、言葉遣いや態度という“知恵”が生まれた――。

他人と関係せずに生きていくなら、金太郎の言動についてもなんとも思わないという。

「しかし、この会社に入った以上、勝手な態度は許さん。人間社会の最低の規則が守れんのなら、明日から出社する必要はない」

しかも黒川専務は、エレベーターを空けることを自分は一度も強要していないという。社員たちが“勝手にやっている”だけで、それをやっても、破っても、自分は何とも思わない――そう言い切るのだ。

……おおおおおおおおお。これは、しびれる!

『サラリーマン金太郎』において金太郎は、既存の堅苦しいシステムを壊す“令和的ヒーロー”にも見える。だが、第4話では、その真逆の正義を持つ人物が現れた。どちらが正しいかは、簡単には決められない。

Z世代の扱いに頭を抱えている全国のサラリーマンに、ぜひ読んでほしい一話。第4話、エレベーター一本で語られる「社会」の話です。