革命的文書「NSS」とドンロー主義

モンロー主義とは、第5代モンロー大統領が提唱した相互不干渉主義だが、トランプ氏はこのモンロー主義をもじって、自らの名をとった「ドンロー主義」と呼び、誇示している。ここでいう不干渉の対象はずばり、中国とロシアだ。

ベネズエラは1999年のチャベス政権誕生以来、反米左派路線を突き進み、自国の石油利権から米系企業を追い出してきた。同時に中国との関係を深め、中国による投資額は累計10兆円を超えたと言われる。

トランプ氏は、この中国の影響力を米国の「裏庭」から完全に排除しようとしている。また、ベネズエラはロシア製の防空システムや武器を多数輸入していたが、米軍の電撃作戦により、それらが米軍には通じないことを世界に可視化させた。

「ドンロー主義」は他国の惨状や人権には興味を示さない。石油利権の確保を優先し、ノーベル平和賞候補にもなった野党指導者よりも、マドゥロ氏の側近だった副大統領を脅して服従させる道を選んだ。

東半球への責任放棄と台湾への「ディール」

さらに手強いのは、ドンロー主義が西半球以外の地域、すなわち欧州やアジア(東半球)については「自分たちで責任を持って軍事費を払い、態勢を整えろ」というスタンスを鮮明にしたことだ。NSSには、日本と韓国に対し「軍事費をもっと増やせ」と名指しで書き込まれた。他国の国防予算にまで言及する安保文書は史上初と言える。

さらに、歴代政権が掲げてきた「朝鮮半島の非核化」という文言までもがNSSから削られた。トランプ氏にとって北朝鮮はもはや核保有国として「取引」すべき対象なのだろう。

中国による台湾侵攻の懸念についても、前述のインタビューでトランプ氏はこう答えている。

「それは習氏(習近平国家主席)次第だ(It's up to him)」
「もし実行すれば、私は非常に不快(Very unhappy)に思うだろう」
「私の任期中は起きない」

極めて「ディール(取引)」を匂わせる表現だ。一方で、台湾に対しては1兆7000億円分もの米国製武器を売りつけている。

ベネズエラ攻撃のトランプ、台湾有事は「習氏次第だ」…「高市総理は次の選挙で力を見せるしかない」東半球への責任放棄と台湾への「ディール」_3

地対地ミサイル「ATACMS(エイタクムス)」や高機動ロケット砲「HIMARS(ハイマース)」、対戦車ミサイル「ジャベリン」など、中国の侵攻にリアルに備えるためのラインナップだ。