自衛隊がスクランブル対応するのは当然
まずは何が起こったのか。経緯を整理しよう。
今月6日午前7時すぎ、中国軍の空母「遼寧」が、駆逐艦3隻を引き連れて沖縄本島と宮古島の間を抜けて太平洋上に姿を現した。
防衛省によると、その後、沖大東島の西270キロまで移動した公海上で停泊。そのまま中国軍の空母艦載機J-15の発着陸訓練をはじめた。
訓練場所は公海上だから法的には問題はない。ただ、沖縄本島と沖大東島の間にある海域で、いわば日本の庭先のような場所で戦闘機の離着陸だ。防衛省幹部は言う。
「当然、いつ領空侵犯されてもおかしくない。自衛隊がスクランブル(緊急発進)対応するのは当然だ」
そのスクランブル発進した自衛隊機に対し、2度にわたって中国軍のJ-15戦闘機がレーダー照射をした、と小泉進次郎防衛大臣が7日午前2時に防衛省で会見して公表した。
発表によると、1度目の照射は6日午後4時32分~35分の3分間。2回目は午後6時37分~午後7時8分の約30分間。1回目と2回目で照射を受けたのは別のF-15戦闘機だ。
軍事の常識ではあり得ない危険きわまりない行為
戦闘機が戦闘機にレーダー照射をするということはどういうことか。レーダー照射には2種の用途があると言われている。一つは捜索用レーダーだ。広く周囲を照射して、周辺の状況や自分が乗る戦闘機の正確な位置を確認するために使う。
もう一つは火器管制レーダーといって、相手にミサイルの照準を合わせるためのレーダー照射、いわゆる「ロックオン」だ。
戦闘機の場合はスイッチのようなもので切り替えてこの2種類を使い分ける断続的にのだが、今回は100キロほど離れた場所から断続的に30分にわたってレーダーが当てられたという。
100キロと聞くと遠いように思えるが、F-15の最高速度は時速2800キロだ。東京––大阪間なら10分程度で移動できる。つまり体感的には「すごそこ」にいるわけだ。
空自関係者が言う。
「照射レベルからいって間違いなく火器管制レーダーだ。軍事の常識ではあり得ない危険きわまりない行為だ。それを30分にわたって断続的に向けてきたというのだから、米軍だったら反撃していただろう」
「中国軍によるレーダー照射は過去にもあった。ただ、戦闘機から戦闘機への照射というのは前代未聞だ。いつどちらかがミサイル攻撃に転じてもおかしくなかった」
確かに、2013年には中国軍の艦艇から自衛隊の艦艇への火器管制レーダーの照射があった。ほかにも中国軍はレーダー照射をオーストラリア軍やフィリピン軍に実施したこともある。ただ、戦闘機による照射は前代未聞だ。













