アニメ上映やコンサートも中止、文化交流も遮断

実際に最近、中国での日本の文化・エンタメ事業で、当局が圧力をかけたか主催者が自粛したとみられる動きが顕在化した。

「上海では11月28日、日本人歌手がステージで歌っている最中に照明と音楽が落とされ、コンサートが突然中断されました。

29日に浜崎あゆみさんが予定していたコンサートも直前で中止されたほか、ゆずのアジアツアーや日本人声優のファンミーティング、日本アニメ映画の上映などが次々と中止になっています」(国際部記者)

写真はイメージです(写真/Shutterstock)
写真はイメージです(写真/Shutterstock)

いずれのイベントも主催者側は「不可抗力」「やむを得ない事情」などというだけで理由を明かしていない。

こうした状況にコメントを求められた中国外交部の報道官は12月1日の定例会見で「具体的な状況や原因については、中国側の(各イベントの)主催者に聞いてください」とだけ答えている。

政府間の関係が緊張状態になっても、両国の市民が相手側の文化を楽しむ空間が残っていれば希望が残ることは日韓関係が示してきたが、中国との関係は深刻だ。

「日本の漫画やアニメなどを愛する中国の人は多いですが、それが制限されても抗議の声を上げるということはできないでしょう。

中国でもかつては政府の方針への異議申し立てが行動で示されることはありました。一番最近では厳しい行動制限による“ゼロコロナ”政策を批判する『白紙運動』と呼ばれる抗議行動が3年前の2022年11月末に起きました。

これは政治的要求をあえて書かない白紙を掲げるだけの非暴力のデモでしたが、参加者は身元を割り出されて拘束されるなど徹底弾圧されました。現金支払いがほとんど行なわれなくなった中国で、参加した若者は電子決済アプリのアカウントが凍結されるなど日常生活が困難になるような状況にも追い込まれています。

その後は政府への抗議活動を表立ってする動きはほとんど伝えられなくなりました」(中国駐在員)

写真はイメージです(写真/Shutterstock)
写真はイメージです(写真/Shutterstock)

結局、政府が認める範囲内でしか日本文化を楽しめない社会になっているというわけだ。

市民の日本訪問に圧力をかけ、日本人の中国国内での活動に脅しをかけ、日本文化の流入も遮断する――。圧力を強めながら習近平政権は「高市首相発言の撤回」を求めるが、高市政権が受け入れるはずはない。今後、日中関係はどうなるのか。

高市早苗首相(本人Xより)
高市早苗首相(本人Xより)
すべての画像を見る

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班