イエロー・マジックとは何か?

イエロー・マジック・オーケストラは、細野晴臣が70年代後半に発表した一連のソロ作、いわゆる「トロピカル三部作」─『トロピカル・ダンディー』『泰安洋行』『はらいそ』─の延長線上のコンセプトを持つプロジェクトとして1978年に結成したバンドです。

言わずもがなですが、ほかのメンバーは坂本龍一と高橋幸宏、残念ながらすでに2人とも故人です。

坂本龍一さん 写真/Shutterstock
坂本龍一さん 写真/Shutterstock
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大瀧詠一、松本隆、鈴木茂と組んでいたはっぴいえんどや最初のソロ・アルバム『HOSONO HOUSE』では基本的に「英米のロックの日本(語)化」を試みていた細野は「トロピカル三部作」において、その名の通り、熱帯地方(ハワイや沖縄など)の音楽を下敷きにしたエキゾチック(その種の音楽は「エキゾチカ」とも呼ばれました)なサウンドを追求しました。

細野に決定的な影響を与えたのは、『EXOTICA』という連作アルバムもある50年代の作曲家マーティン・デニーと、はっぴいえんどのラスト・アルバムに収録された「さよならアメリカさよならニッポン」の共作者であり、細野とは長年の親交を持つヴァン・ダイク・パークスです。

マーティン・デニーが打ち出した、いかにも南国の楽園的な雰囲気のムード・ミュージックは、じつは現実とは何の関係もなく、南島に行ったことさえなかったデニーがでっち上げた想像上の音楽でした。

細野はYMOでデニーの「Firecracker」をテクノ・アレンジでカヴァーしています。ヴァン・ダイク・パークスはソロ・アルバムの2枚目と3枚目にあたる『ディスカヴァー・アメリカ』『ヤンキー・リーパー』で、ファースト『ソング・サイクル』で探求した古き良きアメリカ音楽─アメリカーナ、デキシーランド・ジャズ、オーケストラルな映画音楽など─から南下して、テックスメックス(テキサス〜メキシコの音楽)やカリブ海沿岸のカリプソ、トリニダード・トバゴのスティール・パンなど、同じアメリカ大陸でも合衆国とは異なる音楽的要素を大胆に取り入れてみせました。

細野晴臣はデニーとパークスにならって、民族音楽やエキゾチカのレコードを大量に聴取したうえで、彼自身のイマジネーションとセンスを駆使して、いわば半フェイクとしての異国音楽を提示しました(トロピカル期の細野は中国人めいたいでたちをして「ハリー細野」を名乗るようになります)。

その試みが3枚のアルバムに結実したわけですが、そこにシンセサイザーやドラムマシンなど電子楽器の革命的な進化が重なった。