20代の若者と65歳超の高齢者の幸せはどう違うか

だが実際には、人生の最盛期だと考えられている20代の若者と比べて、大半の高齢者のほうが幸せであることが、研究によって繰り返し示されている。

65歳を超えた人たちは、成人のなかで最も安定した楽観的な展望をもっている。また、うつ病になる人の割合も最も低い。ほとんどの高齢者は比較的幸せだ。活動的で自立した生活を順調に送っていて、高齢者向けの施設には入っていない。

もちろん、長寿にまつわる問題が存在することは私にもわかっている。アメリカにおける加齢の問題をあまりに美化しすぎるのは、悪くとらえすぎるのと同じぐらい有害だ。

『スタンフォード式 よりよき人生の科学』の著者 ローラ・L・カーステンセン博士
『スタンフォード式 よりよき人生の科学』の著者 ローラ・L・カーステンセン博士
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加齢にともなう病気によって、多くの高齢者やその家族の生活の質は低下している。また、社会保障局やメディケア制度も重大な財政難に直面している。

老いにともなう実質的な問題の多くが科学やテクノロジーによって解決目前まで来るとともに、平均寿命も大きく延びている。もし、たんに寿命が大きく延びるだけでなく、身体も心も健康で、人の手を借りずに生活でき、経済的にも安定しているとしたらどうだろうか。その時点で、老いの物語は「長寿」の物語になる。

スタンフォード式 よりよき人生の科学
ローラ・L・カーステンセン (著), 米田 隆 (監修), 二木 夢子 (翻訳)
スタンフォード式 よりよき人生の科学
2025/10/9
2,420円(税込)
448ページ
ISBN: 978-4763142573

老いに関する5つの嘘を科学の力で看破する
①高齢者は惨め?
②遺伝が人生を決める?
③必死に働いて早く引退する?
④老人は社会資源の消費者?
⑤人は孤独に老いていく?

老いへの根拠なき恐怖が、豊かな未来への扉を閉ざしている。
しかし、実際には生物学・医学・心理学・社会学・経済学の融合から長寿は感情の成熟と幸福感の向上をもたらすことが明らかになってきている。
想定外に長くなった人生後半の20年、30年――本来、貴重で贈り物のようなこの時間を、明るい希望で満たすために、アメリカ国立衛生研究所(NIH)メリット賞、アメリカ老年学会(GSA)クリーマイヤー賞 、アメリカ心理学会(APA)マスターメンターシップ賞など多数を受賞する世界的な長寿研究の第一人者ローラ・L・カーステンセン教授が、加齢にまつわる神話と誤解である「老いのパラドックス」を解き明かし、健康で充実した、経済的に安定した長く輝かしき人生を送るための具体的な道筋を示す。

【目次より】
第1章 見過ごせない5つの長寿神話
第2章 老化とは
第3章 長寿の価値を描き直す
第4章 老いの社会的側面
第5章 みんなで支え合う――社会保障制度とメディケア
第6章 未来への投資――科学とテクノロジーの意義
第7章 失敗の可能性を考える
第8章 長く輝かしい未来へ
解説  希望ある長寿社会への羅針盤

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