「組んでくれるなら、副首都法案なんて丸のみでいい」

高市氏周辺は「維新がうちと組んでくれるなら、副首都法案なんて丸のみでいい」

ここで動いたパイプは維新の遠藤敬国会対策委員長だった。国政政党の代表だが大阪府知事で都内にはいない吉村氏から他党との折衝では全権委任を受けていた。

実は高市氏は総裁選立候補前の夏ごろに遠藤氏と大阪でひそかに食事をしている。高市氏自身がこの日を見据えて維新ともパイプを築いていた。

自民党の高市早苗総裁
自民党の高市早苗総裁

公明、国民民主に見放され絶体絶命の高市氏は「何が何でも総理になってやる」という執念で維新との連立協議をひそかに党執行部に指示した。

14日には梶山国対委員長が遠藤氏と都内某所でひそかに会談。15日午前にも会談し、急きょ高市氏と維新との党首会談が決まった。国会での党首会談は共同代表の藤田氏の仕事だったが、吉村氏は大阪から駆けつけた。

高市氏との会談を終えた吉村氏は大阪に戻ってテレビ出演し、高市氏の印象をこう語った。

「昨日お会いして高市新総裁が、この国を動かしていきたい、自分らしい目指す国家像を実現していきたいという熱量がすごく強いなと思って、共感した。政治って結局、最後は熱量なので」と絶賛してみせた。

 この「政治は熱量」というのは維新の創業者橋下徹氏が現役時代によく使っていた言葉だ。

だが、ハードルは決して低くない。

16日から始まった両党の連立に向けて政策協議は早速暗雲も漂う。

藤田氏は自らのエックス(旧ツイッター)に自民に突きつけた12の政策要求項目を貼り付けた。ここでは相当に多岐にわたる項目を並べた。維新幹部は「いまなら俺たちを高く売れる。とにかく入れられるものはすべて詰め込んだ」という。

「吉村さんが前のめり過ぎて戸惑うよ」(維新中堅)

実際には、副首都と社会保険料の改革が絶対条件で、他の部分は交渉の余地があるという。ただ、企業団体献金について維新は「廃止」としていて、これは連立を離脱した公明の規制強化よりも厳しい。果たして折り合えるのか。

身を切る改革を党是とする維新もそうやすやすと妥協できないため、連立合意でもめるとしたこの企業団体献金の書きぶりになるだろう。

ただ、「とにかく吉村さんが前のめり過ぎて戸惑うよ」(維新中堅)とトップが高市自民との連立に一直線なので、同じ維新の他の議員たちからしらけた声も漏れてくる。

それでも吉村氏は「副首都推進法案の足がかりに都構想に挑戦できればいい」と意に介さない。都構想は大阪市を解体して、23区制の東京のように特別区を設置して、府と市に分かれている権限を一元化し、二重行政を解消しようという維新の1丁目1番地だ。