ネガティブな感情を堪能する
具体的な手順は、ネガティブな感情を感じたら、まずその感覚を無視したり抑えつけようとせずに、まず「いま私は何を感じているのか」をじっくり観察する。
その感情によって体にどのような変化が起きているのか、その感情の強さに点数をつけるなら何点か、その感情に形や色があるとしたらどう表現できるかなどを考え、ネガティブな感情が自分に与える影響を、ひとつずつ丁寧に確かめていく。
たとえば、職場で理不尽な扱いを受けて怒りを覚えたなら、「この感情によって自分に何が起きているのか」と自分に訊ねてみる。そのうえで、胸や頭のあたりがこわばっていないかをチェックしたり、「この感情の強さは100点満点で言えば60点だ」や「怒りが赤黒い煙のように渦巻いている」といったように感情を言葉に変え、"怒り"をそのまま観察してみるわけだ。
先述の実験データによれば、この作業を行った参加者は受容傾向が高まり、気分が改善するケースが大幅に増えたという。ネガティブな感情を抱くのは人間にとって自然なことであり、それ自体は問題でない。
決して感情を抑え込まず、その代わりに「また怒りが出てきた」ぐらいに受け止め、ネガティブな感情が自分に引き起こした変化を味わったほうが、実は心の柔軟性は高まる。感情の堪能とは、そういう意味だ。もちろん何事も言うは易しで、ネガティブな感情を簡単に堪能できる人は少ない。慣れないうちは、すぐに不快さから逃れたくなったり、いつものように気持ちを抑えつけたり、感情に流されるまま怒りを人にぶつけたりしたくなるだろう。
しかし、感情の堪能を何度も実践し続ければ、最初は不快だった感情がやがて味わい深さに変わる。そこには、「気分がいい」というだけの幸福ではなく、「自分の人生を生きている」という実感が生まれるはずだ。
#2に続く
文/鈴木祐 写真/Shutterstock













