阪神が弱いと関西でファミスタが売れない
「ファミスタが大ヒットしたのは前年の85年に阪神が“バックスクリーン3連発”など球史に残る強さで日本一になっていたのも大きいと思います。あれで日本全体のプロ野球熱が高まっていましたから」
初代ファミスタの最強打者は「ばあす」。「まゆみ」「かけふ」「おかだ」の能力も高く、タイタンズは強力打線のチームに設定してあった。
しかし、87、88年にリーグ最下位に沈むなど、暗黒期に突入。すでにファミスタは毎年最新版が発売されるようになっていたため、選手のパラメータもそれにアップデートしなくてはいけなくなる。すると、ある問題が生じてきてしまう。
「販売担当から『タイタンズが弱いと関西でファミスタが売れないから強くしてくれ』とお願いされました。
『そういうのはやってないから』と拒否しましたが、その代わりに3年目(『プロ野球ファミリースタジアム'88』)から“先攻びいき”“後攻びいき”という全選手のパラメータがアップするモードを実装することにしたんです。
阪神を強くしたかったらこのモードをうまく使ってね、と。これで関西圏の売上が回復したかはわかりませんが(笑)」
ともあれ、ゲーム史を彩ったファミスタシリーズは、94年から『実況パワフルプロ野球』(パワプロ)シリーズが登場したことで、徐々に存在感を失っていく。それでも岸本さんは「パワプロはすごいゲームだけど、アクションゲームとしてはファミスタのほうがおもしろかったんじゃないかな」と今も胸を張る。
現在、阪神は黄金時代ともいえる強さ。このデータをもとにタイタンズがつくられれば、きっと関西の子どもたちが夢中になる強いチームになるに違いない。
取材・文/武松佑季