国民の生活は苦しいのに、自分たちは給料アップ

物価の高騰に喘ぎ、日々の食材費すら切り詰めている市井の人々の生活をよそに、自民党政権は自らの懐を温めることに余念がないようだ。

月額129万4000円から134万4000円への増額。期末手当や、月額100万円の調査研究広報滞在費、65万円の立法事務費といった、非課税かつ使途不明金を含めた巨大な公費の山の上に、さらに5万円を積み上げようというのだ。

「議員歳費の月5万円増」はまだ生きていた?(写真/共同通信社)
「議員歳費の月5万円増」はまだ生きていた?(写真/共同通信社)
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高市政権や自民党は「公務員の給与改定に準じた措置である」「民間賃上げの流れを踏まえた」などと、もっともらしい理屈を並べる。あるいは「優秀な人材を確保するためには高い報酬が必要だ」という、彼らが好む古びた聖域のような論理を持ち出すこともあるだろう。

しかし、ここで我々が冷静に問わなければならないのは、ひとつの単純かつ冷徹な経済学的疑問である。それは「自民党議員に高い給料を与えれば、彼らは国民のためにより一層働くようになるのか」という問いだ。

 科学的に見れば「議員の怠慢」を助長

多くの人間は漠然と「報酬と成果は比例する」と信じている。給料が上がればモチベーションが上がり、仕事の質も量も向上するはずだ、と。だが、その素朴な信頼を粉々に打ち砕く衝撃的な研究結果が存在する。

自民党が進めるこの「お手盛り賃上げ」が、科学的に見れば「議員の怠慢」を助長するだけの愚策であることを示す決定的な証拠があるのだ。

2017年7月、労働経済学の権威ある研究機関IZAから発表された論文、「Does It Matter How and How Much Politicians Are Paid?(政治家への報酬の支払い方法と金額は重要か?)」である。著者はドゥハ・T・アルティンダグ、S・エリフ・フィリズ、エルダル・テキンの3氏。

この研究は、トルコ議会で実際に起きた法改正を利用した、極めて精度の高い実証分析である。