他者の靴を履くことと同時に自分の靴を履いてもらう大切さ

ーーシスターフッドについて、男性からは感覚として理解するのが難しいという声もあります。その溝を埋めるためにはどんな行動が必要でしょうか?

自分とは全然ちがう他者を理解するエンパシーのことを、私はよく「他者の靴を履く」と表現していますが、他者の靴を履くのと同時に、自分の靴を相手に履かせることも大事なんです。

靴を履いてもらうために、「話さなくてもわかるでしょ?」「伝わらないならもういい」と諦めず、言葉にするしかない。私たちがどんなときに恐怖を感じるのか、何を脅威に思うのかを具体的に話さないと、女性として生きた経験のない男性が理解するのは難しいと思うんです。

今回の著書でも書きましたが、ある男性アスリートの方が、冬になるとパートナーがジョギングをしなくなることを怠惰だと思っていたんです。もちろん、女性は怠けているわけではなくて。イギリスって冬は夕方4時ごろには暗くなるので、女性がひとりで走ると身の危険を感じる。そのことを男性アスリートは、パートナーから聞くまでまったく気づいていなかったんですよね。

それから、当たり前になりすぎて、考えなくなっていることもあるんじゃないかな。たとえば、仕事で日本のオフィスに伺うと、そこはいつ行っても女性だけがキッチンのシンクや冷蔵庫の中を掃除しているんですよ。それで「当番があるんですか?」と聞いたら、「気づいた女性がやっています」っておっしゃるんです。みんなで使っている場所だから、本来は男性もやったほうがいいですよね。

そうやって差別だとも感じないくらい、日常になっていることが日本には多い気がします。

(撮影/集英社オンライン)
(撮影/集英社オンライン)

ーーそこに女性自身が気づくことも必要ですね。

そうなんです。誰かが気づいて声をあげないと、次の世代も、次の次の世代も女性だけが冷蔵庫を拭いているかもしれない。それに、女性が当たり前にやってきた仕事をみんなでやるのは、男性にとってもいいことだと思うんです。

視野が広がるし、女性たちの男性に対するもやつきが解消されると、コミュニケーションが取りやすくなって仕事もスムーズにいく。ちゃんと靴を差し出してわかってもらえば、いろんなことがいい方向に回っていく気がします。