イカ天応募は「一度長蛇の列を経験してみたかった」 

――「たま」のメジャーデビュー&名曲『さよなら人類』の発売から35年が経ちました。

知久寿焼(以下、同) もうバンドは解散しちゃってるからね。とくにどうってものはないですね。

――還暦を迎えた現在もソロで精力的に活動していますが、元たまと言われるのは抵抗が……?

それは事実だから大丈夫です。ただ、あんまりたまのことばっか聞かないで、とはなるけど(笑)。

――今回はたま時代の話題ですみません。イカ天で彗星のごとく現れた印象のあるたまですが、その時点ですでに結成6年。ライブシーンではかなり人気があったそうですね。

吉祥寺の「曼荼羅」や「MANDA-LA2」ってライブハウスを拠点でずっとやっていて、そこはいっぱいになってましたね。でも売れるのは無理だろうと自分たちでも思ってました。

インタビューに応じる知久寿焼氏
インタビューに応じる知久寿焼氏
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――それでもイカ天に応募。

イカ天ってバンドやってる人はみんな気になるわけですよ。

それで友達の笹山(テルオ)さんのバンド(THE WEED)が出演したら、イカ天キングにはなれなかったけど完奏できて(※)、その次のライブが長蛇の列だったって話を聞いたんです。

(※出演者の演奏の映像に対し、審査員全員が赤ランプを押すと映像は強制終了。赤ランプが2つ押されるとワイプとなり、3分間ワイプとならなければ完奏となる。その週のチャンピオン「イカ天キング」が審査員によって選ばれ、イカ天キングが5週勝ち抜くことで「グランドイカ天キング」となる。たまは3代目グランドイカ天キングとなった)

メンバーとの飲み会で「一回、長蛇の列を経験してみたいよなー」って話にはなるものの、意見はまとまらずって感じで。

――メンバー間で出る派と出ない派で割れていたそうですね。

当時は僕が宣伝と事務作業をやってて。自分んちの電話番号を載せたチラシに自分らのバンドのイメージイラストを描いて、知り合いの印刷屋さんに余った安い紙に印刷してもらってライブハウスに置いてた。

でもイカ天だったら音も演奏してる様子もそのまま見てもらえる。宣伝をやってる身としてはこんなにいいものないじゃんって。

イカ天はBEGINやBLANKEY JET CITYといったバンドも輩出した
イカ天はBEGINやBLANKEY JET CITYといったバンドも輩出した

――でも乗り気じゃないメンバーもいたと。

僕らは全員怖がり。番組に送ったデモ音源が却下されたらすごく傷つくから、踏み出せなかったんですよね。

そんな僕らにしびれを切らした当時の女性マネージャーが勝手にデモテープを送って、出演することになったんです。