「菅義偉と小泉進次郎農相に、退陣を進言されていた」
「石破らしくやってくれという強い期待で、総裁になったが、結果として『らしさ』を失うことになった」
9月7日の会見でこう語った石破茂総理（68）。防災庁設置への道筋をつけことや、自民党総裁として政策活動費の廃止を行なったことなどの実績を誇ったいっぽう、「道半ば」での退陣になったと振り返った。
「石破政権は昨年の衆院選に続き、7月の参院選でも惨敗。衆参両院で与党過半数割れとなり、党内では石破総理への退陣要求が相次いでいました。それでも、石破総理は続投に意欲を燃やしていたが、9月2日の臨時両院総会で森山裕幹事長が引責辞任の意向を示すと、小野寺五典政調会長ら党四役が相次いで辞任を表明した。
9月8日に予定されていた自民党の臨時総裁選の是非を問う手続きでも、過半数の賛成による総裁選前倒し確定的な状況に。石破総理は9月6日夜に官邸で、菅義偉副総裁と小泉進次郎農相と面会したが、やはり退陣を進言されていた。打つ手がなくなり、9月7日の辞任表明となりました」（全国紙政治部記者）
本人が述べた通り、約11ヶ月での退陣に至る道程を振り返ると、「後ろから玉を撃つ」と批判されながらも、持論を貫いてきた石破総理らしからぬ振る舞いが目立った。
昨年の総裁選において、石破総理は「国民が判断する材料を提供するのは新しい首相の責任」と述べ、早期解散論に否定的な立場をとっていた。
しかし、総裁就任から間もない2024年10月27日に衆院解散に踏み切る。いわゆる“裏金議員”を非公認にしたものの、選挙期間中に自民党本部から非公認候補が代表を務める支部に2000万円の活動費が振り込まれていた問題が報じられた。
「結局、早期解散は裏目に出て、衆院で与党が過半数割れする大惨敗に終わりました。持論通り、時間をかけて戦略を練った上で解散していれば、また結果は異なったかもしれない」（自民党関係者）
筆者は衆院選後に2度、石破総理に電話取材をする機会があった。その言葉からは、少数与党による政権運営の苦悩が見え隠れした。
1度目は、昨年12月22日。折り返しの電話をくれると「どうせろくな話ではあるまい」などと、毒づきつつも質問に答えてくれた。
当時、話題になっていたのが、「年収103万円の壁」を巡る国民民主党との政策協議だった。国民民主党は178万円までの引き上げを求めていたが、自民党は与党税制改正大綱に引き上げ幅を明記せず、石破総理のリーダーシップが問われていた。
「リーダーシップを見せてどうするんですか、現場が一生懸命やっている時に。だってこっちはさ、国会をきちんと乗り切ることが大事でさ。そん時に私がさ、リーダーシップとかいうものを発揮してどうすんの」
そう電話で語る石破総理は、森山幹事長や宮沢洋一税制調査会長らの名前を挙げ、彼らの支えで「なんとか政権がもっている」と感謝を述べていた。党内融和を意識していたのだろう。
また、かねて石破総理の疲労困憊ぶりが話題となっており、「睡眠薬を常用している」との情報もあった。その点も訊ねると、「それは飲まないと次の日ちゃんと仕事にならないじゃないですか」とあけすけに語った。
2度目は、年明けの1月4日。ホテルニューオータニで正月休み中の石破総理に電話をかけた。「ほんと毎度だね。おたくはろくなことは書かんねえ。なんの恨みがあるんだ」とボヤきながら、あのねっとりとした独特の口調で語り始めた。
年末年始の休みについて聞くと「ない、まったくない」とボヤき、こう続けた。
「元旦はだって、アンタさあ、宮中に行って、能登（半島地震の被災地）に行った。2日と3日は、そりゃもう、山ほどくるメールの返事とか、うーん、（1月）6日の伊勢神宮参拝のあとの年頭（記者）会見（の準備）とか、そんなことやってれば一日は終わりますわな。一歩も外出れないんだから……」
