政策プラットフォームvTaiwan&Join

g0vの制度化の過程で、紛争解決を可能にしたこれらの手法をもっと幅広い政策問題に適用したいという要望が高まっていた。また政府は、ひまわり学生運動以後、市民からの信頼を回復する方法を模索していた。

その結果、g0vが公共政策をめぐる審議促進用に開発したプラットフォームvTaiwanが2014年に設立された。たとえばvTaiwan上でプラスチック製の皿とストローの段階的な使用禁止を求める書き込みがなされると、この提案に対して請願に必要な5000名の署名が即座に集まった。

オードリー・タン氏 撮影:もろんのん
オードリー・タン氏 撮影:もろんのん

その結果、企業が紙やサトウキビなどの再生可能な資源からストローを製造することを承諾し、環保署(現環境部。日本で言う環境省)が政策として法制化することになった。あとになって、提案者は16歳の女子高生であることが判明した。まだ参政権を持っていない16歳が社会を変えたのだ。

また2015年には政府が運営するプラットフォームJoinがスタートした。Joinでは市民が直接政治に参加でき、誰でも発起人になって自身の政策アイデアをオンラインで提出することができる。

たとえばある学生は、「中学校・高校の授業時間を9時30分から17時までに変更する」という意見を投稿し、1万人以上の賛同者を得た。8時から学校に行き、帰宅したあとも塾に通う学生が多いため、睡眠時間が十分にとれないためだ。

このような請願システムは衆愚政治に陥る可能性もあるが、Joinでは5000人以上の賛同者が集まれば利害関係者を招いて政策の方向性を決める協働会議に入る。

たとえば上記の請願の場合、学生グループと教師、保護者、学者などのグループの代表が集まり会議が行われた。その際、専門家は睡眠科学についての最新情報から最適な睡眠時間は8時間で最大でも10時間であることを提示した。これによって非合理的な提案があったとしても、議論とエビデンスにもとづいて退けられる。

この会議は意思決定の場ではなく、アイデアを示したり、お互いの意見に耳を傾けたりする場であるが、もちろん熟議だけでなく、いつかは合意を形成しなければならない。そのため台湾ではオンライン上で合意形成のプロセスを可視化する新しいテクノロジーを導入した。とくに有名なのは大規模なグループの人々が協力できるよう設計されたソーシャルメディア・ツールPol.isだ。