周縁の国が世界を導く
李 このたびはお忙しい中、お話する機会をいただきありがとうございます。実は、あなたとずっとマジック:ザ・ギャザリングについてお話したかったのです。
その理由は、『PLURALITY 対立を創造に変える、協働テクノロジー』(サイボウズ式ブックス)でも触れているように、あなたがかつてこのゲームのプレイヤーであり、その大会のために来日したこと、そしてこのゲームの創始者であるリチャード・ガーフィールドが書籍に推薦文を寄せているだけではありません。
このカードゲームは、差異をこえたコラボレーションにより対立を創造性に変えるPlurality(プルラリティ)を体現していると思います。たとえばこのカードゲームには強すぎて使用禁止のカードがありますが、それは製作者が意図したことではありません。多くのプレイヤーたちが他のカードとの組み合わせやさまざまなプレイスタイルを取り入れることで、制作者の予想を超えるカードの潜在能力が発見されたのです。これはまさに、Pluralityの精神そのものだと思います。
私はあまり良いプレイヤーではなかったですが(笑)、制作者によるトップダウンではなく、プレイヤーたちによるボトムアップ型のゲームであることに魅力を感じました。あなたも同様であれば嬉しいです。
タン なんて素敵なサプライズでしょう! あなたのマジック:ザ・ギャザリングに関する指摘は的を射ています。リチャード・ガーフィールドがマジック:ザ・ギャザリングのデザインを始めた際、彼は製作者が想像もできなかったような新しい戦術をプレイヤーが生み出せるほどの、堅固なルールセットを創り出しました。
あなたが言及した禁止カードですが、それらは、単一の頭脳では予測できないケースを集団の知性なら発見できる完璧な例です。そして、5つの哲学が衝突しながらも組み合わさるカラーパイ(註:マジック:ザ・ギャザリングにおいて5つの色にそれぞれ割り当てられた機能的な特徴、および色ごとの思想の関係を指す言葉)——それはPluralityの体現そのものです!
「Gathering」というモットー自体も、多様な要素を結びつけることを示唆しています。
李 さて、このたび日本語訳が出版された『PLURALITY』ですが、本書の特徴は、アメリカやEUだけでなく、台湾やエストニアなど、従来テクノロジーを論じる際に看過されてきた小さな国々にもスポットライトが当たっている点だと思います。これからテクノロジーの最先端はアメリカなどの大国だけでなく、世界中の国々に広がっていくと思いますか?
タン 周縁こそが先導する――それは、その必要に迫られているからです。エストニアが独立を回復した際、彼らは何のシステムも引き継がなかったため、デジタルファーストなシステムの基盤を構築しました。台湾が外交的な孤立に直面した際、私たちは世界との接点として徹底的な透明性を採用しました。これらは偶然ではありません。
これらは私が「圧力こそがダイヤモンドを生む」と呼ぶ事例です。私たちはその後、社会的利益のためのテクノロジーの新たな応用を迅速にプロトタイプ化し、繰り返し検討し、実証しました。これにより、他者が参照し発展させられるオープンソースの設計図として、デジタル公共インフラの基盤を創造したのです。