アジア圏で絶大な人気
2024年12月6日、女優で歌手の中山美穂さんの訃報は、日本のみならず中国や韓国、台湾や香港でも衝撃をもって受け止められた。なぜアジア圏の人たちが?と疑問に思う人もいるかもしれない。
実はアジア圏、とくに東アジアにおいて中山さんは、岩井俊二監督の劇場用長編監督作第一作『Love Letter』に主演したことで絶大な人気と知名度を誇っていた。
1995年に日本で初公開された同作は中国で1999年に劇場公開された。当時はまだ中国の映画業界の市場規模は小さく、大ヒットとはいえなかったが、口コミではかなりの高評価を得ていた。
その後、海賊版などで鑑賞する人が増えたことで『Love Letter』は“アジア映画史上最高の恋愛映画”と絶賛されるようになっていった。中国のソーシャルカルチャーサイト「Douban」では現在も10点満点中で8.9の高得点で、120万人以上が評価するほどの不朽の名作となっている。
さらに韓国で1999年に劇場公開された際には140万人を動員した。これは韓国で公開された日本の実写映画の最多観客記録で、その後23年間打ち破られなかった。
作中で中山さん演じる渡辺博子のセリフである「お元気ですか? 私は元気です」は韓国で流行語となり、舞台となった北海道小樽市には多くの韓国人観光客が押し寄せるほど一大ブームとなった。
2025年は中山さんの女優デビュー40周年にあたり、映画は劇場公開から30周年という記念の年だ。岩井監督は中山さんとロケ地だった小樽に雪が積もる間に再訪しようと約束をしていたという。しかし、その約束は果たされることはなくなってしまった。
そんなタイミングで、4Kリマスター版が劇場で上映されることになり、スクリーンで再び観られるようになったというわけだ。
岩井監督は『Love Letter 4Kリマスター』公式サイトのコメントの中で、〈今でも、若い方や世界各国の方たちからSNSを通じて「『Love Letter』を観ました」というコメントをいただきます〉と話している。
アジア圏内の映画祭では若手監督が影響を受けた監督として岩井監督や、作品として『Love Letter』を挙げるなど、国や世代を超えて今もなお影響を与え続けている。