市民ハッカーコミュニティg0v
台湾におけるデジタル民主主義の象徴はg0v(発音はgov-zero)である。市民ハッカーコミュニティであるg0vは、テクノロジーを活用して行政府の動きや予算の内容を可視化し、広く市民に伝えることをミッションとする。
g0vが世間の注目を集めたきっかけはひまわり学生運動だった。2014年3月17日に国民党の馬英九が台湾・中国間での通商合意「海峡両岸サービス貿易協定」について、十分な審議を行うことなく強行採決に踏み切ったことに抗議した学生たちは、立法院を3週間にわたり占拠した。
g0vでは立法院を占拠した学生たちの様子のライブストリーミングがサポートされ、参加者同士で議論できる場がつくられ、さらに貿易協定によって人々がどれほどの影響を受けるのか、企業名や事業者番号を入力するだけでわかるツールも開発された。
2014年3月30日には50万人が街頭に出て、台湾では1980年代以来最大のデモが行われた。抗議者たちによる「貿易協定の可決前に再検討手続きを経る」という要求が4月6日に王金平院長によって受け入れられたことにより、占拠はその後すぐに解散した。
このデモは単に抗議するだけでなく、多くの人々が協力しあいさまざまな意見を取り入れたものであったため、政権はg0vの手法に意義を認めるようになった。とくに当時の馬英九政権の政務委員だった蔡玉玲はオードリー・タンをリバースメンターに指名し、g0vの会議にも出席し、g0vプラットフォームを通じてますます多くの政府資料を公開するようになった。