「田久保はもうこの後、何の力も権限もない一般人になるわけです」
そして田久保氏が強く主張したのが、卒業証書は「私の中では本物であるというふうに思っております」という認識だ。議長らにちらりと見せたのも「私の方は本物であると思いまして、必要であると思った方にお見せしております」と主張する。
ただ「私が本当に本物であると言ったところで確かな裏付けのない言葉だけのことになってしまいます」と考えて捜査に任せる判断をしたのだという。
すると当然記者団からは、では本物だと思う証書を見せてくれとの要求が出た。記者の一人が「市長、いかがでしょう」と田久保氏に回答を求めた時に割って入ったのが弁護士だ。
「私が先に答えてもいいですか。気持ちはよくわかるんですけども、もう先ほど辞職を表明していますので田久保はもうこの後、何の力も権限もない一般人になるわけです。かつ刑事告発され被疑者という1番弱い立場に転落したことになります。で、私はこれを守る刑事弁護人の職責があります。そうするとこれから刑事事件として取り調べられる可能性の重要な証拠を安易に公開することはできないと考えています」(弁護士)
これが、田久保氏が卒業証書を公開しないために見出した名分だ。
実は検察への卒業証書などの提出は、同じ7日午前に伊東市内の建設会社社⻑が公選法違反容疑で田久保氏を刑事告発したことに対応したものだ。被疑者側が自身の法的処罰に直結する重要証拠を公開しないことや、捜査機関に自らを防御する材料として提供することは刑事弁護の世界では当然のことだ。
さらに、前述の通り伊東市議会は7日に百条委設置も決めたが、同委が当然要求するはずの卒業証書などの提出を、田久保氏は検察に提出したことを理由に拒むことができ、「起訴される恐れがある」として証言を拒否することも可能になる。
結局、追い込んだつもりの刑事告発はメディアや百条委による解明の足かせとなり、市長追及派には「悪手だった」との見方も出ている。