「顔以外は布で隠されていました」
事件後に警視庁からは何も伝えられておらず、情報収集はインターネットが頼りだという父親は、18年の生涯を真っ直ぐに生きた愛娘を思いやり、時おり言葉を詰まらせ、千明被告に対してこう言葉を絞り出した。
「……本当に同じ思いをさせてやりたい、そういう思いです。ただ何があったのか真実を知るまでは(事件については)何も言いたくないんです」
千明被告は警視庁の調べに対し、凶行に及んだ動機を「外で会わないと言われたから」と供述している。あまりに身勝手な犯行で娘を突然奪われた父の生活も一変した。
「私には息子もいますけど、娘とともに、2人の子の命が自分より大切だと思っていましたから。だから、なんで自分が生きているのか、何もやる気になれないというか……。
あいつ(被告)は優奈1人を殺したつもりかもしれないけど、そうじゃない。家族全員が傷ついて、あいつを恨むしかないんだ……。それほど殺され方がひどすぎた」
父はここでしばし絶句し、遺体と直面した様子を振り返った。事件発生当日の10月27日早朝、衝撃の電話で起こされた。
「電話は病院からで、『娘さんが死亡し、病院で安置しています』って言われて……。最初は冗談としか思えなかったけど、身近な人に連絡してすぐに病院に向かいました。遺体は全部布で隠されて、顔だけ出された状態だった。とても全身を見せられる状況じゃなかったんでしょう。本当にひどかった。
首を刺されたと聞いていたこともあって、どうしても首の方に目がいってしまった。そして、顔もひどくやられていました。今でもその死に顔しか思い浮かばない……」
対面時は、まだ傷の処置もされていなかった。
「現場のガールズバーで、すでに手の施しようがない状態だったようです。安置していた病院では、医師が『ひどすぎて全身はとても見せられない』と判断したのでしょう、顔以外は布で隠されていました。
でも、顔は、切り傷というか……鼻の穴まで切られてひとつになってしまっている状態で……。病院に向かう途中は『何とかならなかったのかよ』と何度も思いましたが、遺体の状態がもう衝撃的すぎて。どうしても何度もこの時の顔を思い出してしまいます」