ガソリン減税、与党だけでなく野党も「頑張った感」を演出
野党7党が国会に提出したガソリンの暫定税率廃止を求める法案は、同法案の審議入りを拒否していた与党の衆議院財政金融委員会委員長が史上初の解任に追い込まれた。その後、法案自体は衆議院で可決したものの、参議院において与党反対で審議入りすらせずに廃案となった。
筆者の感想は「国会議員は国民を舐めている」というものだった。ただし、国民を舐めているのは「与党」だけでなく「野党」も同じだ。
政治は日程(スケジュール)である。特に日本のように通年国会ではなく「会期末」がある国会運営の仕組みの場合、会期末ギリギリに行われる対決法案の審議は茶番であることが通例だ。
与党としては予算審議や法案審査などで野党に国会日程調整を協力してもらうために調整を行う。その際、何としても通したい法案は会期末ギリギリではなく法案審議日程を先に持ってくるように促す。
通常の場合、法案は与党賛成多数で通ってしまうため、野党側としては、メディアにアピールできる対決法案を会期末ギリギリに持ってくる与党とスケジュールで妥協する。
したがって、会期末になると与党による強行採決が実行されて、野党が内閣不信任決議を出して否決される茶番が行われる。この茶番がメディアで喧伝されることで、与党だけでなく野党も「頑張った感」を演出されることになる。
平たく言うと、日本の国会とはそういうものだ。
もっと前から審議することはいくらでも可能だった
国会議員たちも自分たちが何をやっているかは分かっているため、最近では首相を始めとして支離滅裂な答弁を繰り返し続けて、何事も無かったかのように審議時間だけが消費されている。
各委員会の委員長もだらけ切っていて、国会質疑を小馬鹿にしたような政府答弁にまともに注意することもなく、立法府としての矜持すら欠片も感じられない議会運営をしている。議会制民主主義の堕落が極まった状態だ。
そのような前提を踏まえて、今回のガソリン税暫定税率廃止法案の顛末を見てみよう。
現在の衆議院議席構成は少数与党である。したがって、野党が共同で法案を提出することが出来れば、今回の暫定税率廃止法案は「いつでも」「十分な」審議時間を取ることができた。
しかし、野党は同法案についてお互いに協力することを延々と拒み続けた上、実際に国会に法案提出したのは6月11日であった。しかも、7月1日からの暫定税率を廃止するというトンデモ日程の法案内容だ。
6月22日に通常国会が会期末を迎える見通しの中、衆議院で法案を野党賛成多数で通した上で、参議院で審議した上で与党反対多数で否決、その後の衆議院で再審議した上で云々、という国会プロセスを考えると、この法案提出のスケジュールでは同法案が十分に審議されることも、まして成立することもあり得ないことは明白だった。