引っかけたフォーシームの意味

こうして実現した663日ぶりの復帰登板。対戦相手にはマチャドやタティスJr.ら強打者を擁する同地区のライバル、サンディエゴ・パドレスだけあって、1イニングを2被安打1失点とピシャリとはいかなかったが、28球を投げて最速161キロも記録した。

大谷本人も「結果的にはイマイチでしたけど、自分の中でいいイメージを持って前進できる材料はたくさんあったのでいい一日でした」と手ごたえを掴んでいた。

「復帰登板でいきなり100マイル(160キロ)以上が出るとは思ってなかったですし、シンカーの割合も多くて“投手・大谷翔平”がバージョンアップして帰ってきた感じ。上ずることなく全体的にボールもまとまっていたし、内容としてはよかったと思います」(佐野氏)

 ロサンゼルスの街で見られる“二刀流・大谷”の巨大壁画

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ただし、暴投を含め引っかけてしまうフォーシームも目立った。トミー・ジョン手術経験のある佐野氏はこの球についてこう解説する。

「おそらく(右打者の)アウトコースに決めようとしたボール(フォーシーム)でしょうが、体が先に開いた分、引っかかったということですね。僕も経験があるんですが、肘をケガするとあのボールを投げるのが少し怖いんです。というのも、腕を振ろうとするとケガ再発のリスクが高まる。

でも、アウトコースに決めにいくとつい腕を振ってしまう。本来、腕を “振る”ではなく、下半身をうまく使って腕が“振れる”のが一番いいんで、少しそこは注意してほしいですね」

現在、大谷は10年契約のまだ2年目。焦らず慌てず、ゆっくりと二刀流の最終形を完成させてほしい。

取材・文/集英社オンライン編集部