体毛が気になる?
体毛処理の実態を確認する前に、体毛を意識する程度、つまりは「体毛が気になっている」という子どもの割合についても確認しておきたいと思います。
調査データを用いて、学年別に体毛を意識する程度をまとめたものになります。
「体毛が気になる」に対して「ややあてはまる」または「あてはまる」と回答した女子は、小学1年生から3年生は6〜7割程度で、学年が上がるに従い多くなり、6年生では7割になります。弱い関連ではありますが、メイクアップとは異なり、どうやら年齢が上であるほど体毛を意識する人がわずかに多いことがうかがえます。
この背景には、おしゃれ意識の高まりがあると考えたいところですが、先ほど見たように、「おしゃれが好き」な程度や「服装や髪型などにこだわっている」程度は学年で大きな違いはありません。そうなると、他の理由を考えた方がよさそうです。
ここで考えられる理由の一つは、第二次性徴といった身体の発達の影響です。脇などこれまで生えていなかったところに体毛が生えてきますし、それにともない、腕や脚といった部位の体毛(この場合は産毛)も意識するようになる可能性があります。「毛」というものに意識が向き始めるわけです。
これは、母親のデータからも確認できるかもしれません。学年毎の「お子さんから体毛についての相談をうけたことがある※3」の回答をまとめてみると、学年が大きくなると相談される経験が多いことが確認されます。
一方、学年毎の「お子さんとおしゃれの話をする※4」の回答をまとめてみると、関連は認められませんでした。つまり、おしゃれについてのコミュニケーションの程度は学年で変わらないのに、体毛の話は学年が上がると出てくる傾向があるのです。やはり、おしゃれ意識というよりは身体の発達が、体毛意識に影響している可能性があります。
なお、先に言っておくと、体毛を意識する程度が大きいほど、体毛処理の経験があることが確認できています。気になってもやり方がわからない、道具を購入しにくい、近くに脱毛エステなどがない、もしくは予算の問題で難しい、などいろいろな要因があるので、体毛を意識することが必ずしもそのまま実際の体毛処理の経験に直結するとは限りません。
それでも、気にしているほど体毛処理を試みる傾向があることが確認できます。
〈注〉
※1 鈴木公啓「子どものおしゃれの低年齢化未就学児から高校生におけるおしゃれの実態」(『慶應義塾大学日吉紀要言語・文化・コミュニケーション』、50、53―69頁、2018年)
※2ニフティキッズ「みんなのホンネ調査レポート「コスメ」」https://kids.nifty.com/parent/research/cosmetics_20240601/?utm_source=niftykids&utm_medium=prtimes&utm_campaign=researchreport_0613(2024年)
※3 「まったくない」から「頻繁にある」の4件法で回答を求めています。
※4 注3と同じ4件法です。
文/鈴木公啓 写真/shutterstock