なぜ過疎地の郵便局を合理化しないのか

民営化前の郵便局には「普通郵便局」と「簡易郵便局」のほかに「特定郵便局」があった。財政難だった明治時代に郵便局を普及させるため、地元の名士や大地主に土地と建物を無償で提供させ、郵便事業を委託したのだ。

局長は25歳以上〜55歳以下で、国家公務員としての欠格事由に該当しない場合は応募することができ、公募されずに特定の関係者が採用されるという独特の慣例があった。このときの局長が中心となって組織されたものが、現在の全国郵便局長会である。

民営化されて普通郵便局と特定郵便局の区別はなくなったが、およそ1万9000局は旧特定郵便局で、小規模局がほとんどだ。

近年は年賀状なども減少傾向で郵便物の絶対数は減っている
近年は年賀状なども減少傾向で郵便物の絶対数は減っている

現在は一般の「郵便局」と「簡易郵便局」の2つの区分に分かれたが、簡易郵便局は日本郵便と個別契約を結んだ事業主が運営する郵便局だ。全国に4000局存在し、郵便業務や貯金、保険などの業務を行なっている。

委託料は固定と変動の2つで構成されており、固定報酬は毎月31万2000円ほど。これに加え、窓口業務の取扱量に応じた額が得られる。経営の効率化という観点で見れば、一般的な郵便局から簡易郵便局への切り替えが進んで然るべきだ。

しかし、これが進んでいるようには見えない。

民営化後、過疎地で営業している普通郵便局の数は155局増加したが、より運営コストの低い簡易郵便局に切り替わったのはわずか47局だ。郵便局の数が多い都市部の郵便局は統廃合が進んでいるものの、客数が少ない過疎地の小規模郵便局は非効率な状態で残されている。