今、650億円の支援策を決めた理由
自民党の「郵便局の新たな利活用を推進する議員連盟」が財政支援に動いたタイミングも気がかりだ。2025年は参議院議員選挙が行なわれるため、それを見越していたとも見て取れる。地方の組織票の獲得だ。
「日本郵政」という会社は極めて特殊で、メジャーな政党は軒並み口封じされているかのようだ。国民民主党最大の支持基盤、連合を構成する巨大な組織の一つに「日本郵政グループ労働組合」がある。組合員数はおよそ22万人。国内最大の単一労働組合だ。この労働組合の政治団体「郵政未来研究会」は立憲民主党の支持母体だ。
つまり、労働組合がバックにつく国民民主党や立憲民主党も、郵便局を積極的に減らすという提言ができない。国の収入であるべき650億円の支援に反対できないのだ。
日本郵便がユニバーサルサービスを提供する意義や目的は十分に理解ができる。過疎地の郵便局ではマイナンバーカードの受付事務などを受託しており、住民への利便性向上や自治体の業務負荷軽減に貢献しているのも事実だ。郵便局が消滅することに不安を覚える住民も多い。
しかし、ユニバーサルサービスという大義名分のもとで公金を流し続け、中長期的に人口減少が明らかな日本において郵便ネットワークを維持し続けることが、あるべき姿ではないはずだ。民営化した日本郵便がゾンビ化するだけである。
統廃合や経営効率化の十分な議論がなされないままに650億円の支援を決定するというのは、あまりに拙速であるように見える。
取材・文/不破聡 写真/shutterstock