自分の可能性を知るために

スポーツを始めるにあたり、はじめに何をすべきか。特に競技スポーツにおいて、種目の選択は重要である。私はサッカーが、私は野球が好きだから、その種目を始める。それもよいと思われる。

だが、競技スポーツは競い合うためにあり、結果は勝敗や記録となって表れる。いわば優劣がつくのである。こうなると、誰もが「勝ちたい」、あるいは「自己の記録を更新したい」と思うのは当然のことであろう。

そこで考えなければならないのは、「自分にとって、より向上していく(伸びていく)スポーツは何か」ということだ。個々の素質によって、向上していく種目とそうでない種目があるからだ。その素質を「体型」「感覚」の2つから考えていく。

体型

体型も各種スポーツのパフォーマンスに大きく影響する。体型は身長や体重だけでなく、細身、ガッチリ、肥満などの体質も考慮に入れる。さらに全身(頭、胴体、腕、脚、手、足)のバランスなどもパフォーマンスに影響する。

スポーツを始める前に、自分の体型についてもよく知っておかなければならないが、発育発達を考えると、幼少のころにはまだわからない。身長はおよそ中学生か高校生のときに決まる。骨の成長に合わせて身長が決まるためである。このころ、成長痛の起こることが多い。

余談であるが、息子の広治も中学3年生の夏に176㎝だったのが、わずか半年で184㎝になり、成長痛も起きた。レントゲン写真を見ると、脚・首の骨が太い。外科医に、運動はしばらく行なわないようにと言われた。

そして高校のとき、現在の188㎝となったが、特に骨の成長期に厳しいトレーニングは禁物である。このため息子には、成長痛が治まった後も3〜4年は厳しいトレーニングを行なわせなかった。高校時代のウェイトトレーニングは、ごく軽いもので形を指導し、ジャンプ、ダッシュなども量を少なくして行なわせた。

それでも高校時代のハンマー投げで、広治は信じられないような記録を出した。それはウェイトトレーニングに重きを置かず、先天的に持っている力(特にジャンプ力やダッシュ力とハンマー投げの技術力)で、どこまで記録を伸ばせるかを考えたからである。

大学に入ってからは、ウェイトトレーニングも本格的に行なわせるつもりだったが、ヘルニアになったため、1年間ほとんどウェイトトレーニングはできなかった。ヘルニアが治って、少しずつウェイトトレーニングやジャンプ、そしてダッシュが行なえるようになった。

2000年7月22日、ハンガリーのブダペスト、パーミット陸上競技大会。人民競技場での広治、著者、由佳  写真:AP/アフロ
2000年7月22日、ハンガリーのブダペスト、パーミット陸上競技大会。人民競技場での広治、著者、由佳  写真:AP/アフロ
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広治が大学3年生で72m台を投げたときの体重は、76〜77㎏しかなく、この体型ではさすがに世界へ出ていくことは難しいと思った。しかし予想に反して、大学を卒業して4年目で、広治の記録はなんと80mを超えた。

このときの体重も90㎏程度で、世界のハンマー投げ関係者は、その細い体型で80mを投げたことに驚いていた。その後も広治は、オリンピックや世界選手権で優勝するが、あの体型なら、ハンマー投げ以外でも、世界の一線で活躍できた種目は多くあったように思う。