意識性の原則
私が長きにわたり指導をしてきた中で、多くの選手に欠けるものが、この「意識性」であるように思う。
目的を持ち、意識的にトレーニングをしている者と、漠然とトレーニングをしている者とでは、将来大きな差が生まれる。
私がかつて長いスランプを乗り越えられたのも、「考える(意識する)」ことを始めたからである。心・技・体・調(調整・コンディショニング)の大局から、細かい動きまで、ハンマー投げのパフォーマンスを高めるために考えて、そのアイディアを実践してきた。
そして指導者として今も、選手たちの向上のために考え続けている。これは、ハンマー投げが特に、難解な技術を要する競技だからであろうか。
そして、この「意識性の原則」は、指導者より選手自身が守るべきものである。これができない選手の多くは、既成概念が邪魔をしている場合が多い。
「虚心坦懐」という言葉があるように、先入観を捨てて柔軟な考え方を持つことである。選手自らが殻を破り、新たなものに挑戦していくクリエイターとならなければならない。
これを簡単な図式にしてみる。
意識して実践→成功または失敗→回路ができる→その回路が多いほど正確性は高まる
まずは自分の課題や目的を意識して、実践してみる。すると、そこに「成功」または「失敗」という結果が出る。ここで失敗はダメかというと、そうではない。
失敗も成功もひとつの「回路」として残る。
成功そして失敗の回路を増やしていく。この回路が多くなればなるほど、技術の幅が広がり、成功の確率が増える。このような考え方で実践していくことが、意識そのもののレベルアップにつながる。
ハンマー投げだけでなく、ほかの多くの分野での成功においても、この「意識性の原則」は当てはまるはずだ。