診断が難しく進行が早い「原発不明がん」

山田 最初に僕の話からしますと、2024年6月の終わりに腰がピキッときて、ぎっくり腰だと思って近所の整形外科に行ったら、「骨折の疑いがあるからMRI(注1)を撮りに行ってください」と言われまして。でも仕事が忙しかったので、「骨折じゃないだろう。痛いのは筋肉だぞ」と自己判断して、痛み止めを飲んで放っておいたんです。

注1  MRI検査(Magnetic Resonance Imaging:磁気共鳴画像法)は、強力な磁石と電波を用いて、体の内部を詳しく画像化する検査です。CT検査では評価が難しい骨や脳、神経などの病変の診断に適しています。

その後、7月になってから、咳をした瞬間に肋骨がパキッといきまして。肋骨が折れたことは以前もあったので、またそのままにして7月の終わりに人間ドックを受けたら、そこの医師も「すぐにMRIを撮ってください!」と。その剣幕からただごとじゃないと思って、8月に入ってすぐに人間ドックと提携している大学病院でMRIとPET検査(注2)をしたら、後者の画像が真っ赤だったんです。

注2  PET検査(ポジトロンエミッショントモグラフィー)は、がん細胞の“活動量(代謝)”を画像として捉える検査です。CT画像ではわかりにくいがんの活動性や広がりを診断することができます。

骨とリンパと、あと肝臓にも、パチンコ玉をぶちまけたように「がん」だとわかる赤い斑点がいっぱいあって。でも、その5ヶ月前に人間ドックを受けたときは、MRI検査でも何の問題もなかったんですよ。

山田五郎氏(撮影/野﨑慧嗣)
山田五郎氏(撮影/野﨑慧嗣)
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 私の夫もずっと健康だったんですが、「お腹が変」だと言い出して。その3週間後、いつものようにスポーツクラブで運動した直後、腹部に激痛が走って、そのまま動けなくなったんです。

すぐに病院で検査してもらうと腸閉塞と診断されて即入院となり、2〜3週間で治るだろうと思っていたのに全然良くならなかった。腫瘍マーカーや生検(患部の一部を切り取り顕微鏡などで調べる検査)もしたようですが、「がんじゃありません」と言われ続けていました。その言葉に私はすがっていたんです。

けれども、当時はコロナ禍だったため、LINEのビデオ通話で毎日話をしていた夫がどんどん弱っていくのが画面越しでもわかりました。3週間に1回、診察室で本人と会う度に容態が悪化して、入院から2ヶ月半後に、腹水の細胞診からクラスⅤのがん細胞が見つかったんです。その時はじめて、「原発不明がんの可能性がある」と医師から知らされましたが、いったい何が起こっているんだろう?という恐怖しかありませんでしたね。

山田 僕も東さんのご著書を拝読し、ご主人の症状が悪化していく速さに驚きました。僕は十数年前に、食道がんにも罹ったんですよ。その時は、人間ドックの胃カメラで早期発見できたので、「内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)」という手術で、お腹も切らずにきれいに取れたんです。

でも今回はそう簡単にはいかないだろうと素人目にもはっきりわかりましたし、わずか5ヶ月でがんがあんなに広がっていた早さにも恐怖を覚えました。さらに「原発不明がん」という聞き慣れない診断が下ったときには、もはや観念するしかありませんでした。

下山 「原発不明がん」そのものを知らない方がほとんどですから、驚かれるのも無理はないでしょう。「原発」というのは医学用語で「がんの発生元の部位」のことで、それがわからないから「原発不明がん」なのです。たまに、「原子力発電所と関係があるんですか?」と訊かれる方もいますが、まったく何の関係もありません。

がんは、人によって症状も経過もまったく異なりますが、特に原発不明がんは、がんの発生元がわからないために判明や診断が遅くなることも少なくないのです。山田さんのように、症状が出てすぐに画像検査で診断がついたことは、不幸中の幸いでした。

一方で、東さんの場合は腸閉塞から始まっているので、主治医は消化器の病気としてアプローチしていたはずです。最初は、腫瘍マーカーや生検でもがんが見つからなかったようですので、がんを前提とした検査には進みにくかったのだと思います。