依然、求められる説明責任
また、国内外のタイムラインのピースを埋めていくと、最も興味深いのは、西廣弁護士が「防犯カメラ映像を同映画において使用しない方向」という返答を受け取ってから、試写会で映画の全容を知った西廣弁護士が記者会見で沈黙を破るまで、いわば『ブラック・ボックス・ダイアリーズチーム』が海外で稼いだ10ヶ月間という時間である。
この10ヶ月こそが、本作品が世界的な前評判を確立するために不可欠な時間であったことは、作品の軌跡を辿れば否定すべくもない。
だがその間、伊藤詩織監督が、海外の配給パートナーやオーディエンスに作品を正しく説明していたか──すなわち、国内で上映の目処が立たないのは権利処理や許諾の問題にも関することを隠し、政治的な影響力や性暴力に関して話すことが依然としてタブーである日本の文化や国民性の問題であるとし、作品の状態に関して正しい説明責任を果たしてこなかったのではないか──は、英語圏での報道分析を通して西廣弁護士サイドの記者会見で提起された一つの追加論点であった。
2月20日に中止となった伊藤詩織氏サイドの記者会見は、アカデミー賞の授賞式が終わっても、依然として開催が待たれている。
文/蓮実里菜