夫の言葉を毎日聞いていなかったら……
私は、「努力の上に運を積み重ねることができた」と、自分自身の放ったヒットに満足していました。でも、そんなときにひとりだけ、私の傍らには、浮足立たない人がいました。夫です。夫はいつも私に口うるさく言いました。
「それで、仕事はいつやめるんだ?」
「いつも他人に預けられる、子どもの気持ちを考えたことがあるのか?」
そのたびに私ははぐらかして言いました。
「そうねえ。そのうちにね。考えておくわ」
「わかっているわよ。でも、このキャンペーンを立ち上げるまでは私、がんばらなくちゃいけないのよ」
いつもその場しのぎの言葉で逃げていこうとする私を、夫は許そうとはしません。そして何度も繰り広げられる口論。私は正直、うんざりしていました。「どうして夫は、仕事も育児もがんばっている私を評価してくれないのだろう」。そんなふうにも思ったりもして。
でも、もしこのとき、「どんな仕事をしていようと、まずは自分の子どものことを一番に考えてやれ」という夫の言葉を毎日聞いていなかったら……。私は家族のことを顧みない、働きマシンになってしまっていたことでしょう。
夫の言葉はいつも耳が痛いものばかりでした。けれど、考えてみれば、自分の半径5メートル以内で暮らしている家族のことも考えてあげられない人間が、いきなり世の中の女性たちの幸せを考えるのは、やはり変な話なのです。