夫の言葉を毎日聞いていなかったら……

私は、「努力の上に運を積み重ねることができた」と、自分自身の放ったヒットに満足していました。でも、そんなときにひとりだけ、私の傍らには、浮足立たない人がいました。夫です。夫はいつも私に口うるさく言いました。

「それで、仕事はいつやめるんだ?」

「いつも他人に預けられる、子どもの気持ちを考えたことがあるのか?」

そのたびに私ははぐらかして言いました。

「そうねえ。そのうちにね。考えておくわ」

「わかっているわよ。でも、このキャンペーンを立ち上げるまでは私、がんばらなくちゃいけないのよ」

56歳で起業、75歳で高校を設立した90歳の美容研究家が「耳が痛いことを言ってくる人を憎んではならない」と説く理由_2

いつもその場しのぎの言葉で逃げていこうとする私を、夫は許そうとはしません。そして何度も繰り広げられる口論。私は正直、うんざりしていました。「どうして夫は、仕事も育児もがんばっている私を評価してくれないのだろう」。そんなふうにも思ったりもして。

でも、もしこのとき、「どんな仕事をしていようと、まずは自分の子どものことを一番に考えてやれ」という夫の言葉を毎日聞いていなかったら……。私は家族のことを顧みない、働きマシンになってしまっていたことでしょう。

夫の言葉はいつも耳が痛いものばかりでした。けれど、考えてみれば、自分の半径5メートル以内で暮らしている家族のことも考えてあげられない人間が、いきなり世の中の女性たちの幸せを考えるのは、やはり変な話なのです。