「ほんとうにやさしい人」は誰か

いまだからこそ思うのですが、夫が私にさまざまな叱責を続けてくれたからこそ、私も必死になって娘のためにできることをしつづけることができたのだと、亡き夫にはとても感謝しています。

どんな人間でも、自分の耳に心地よい言葉を好むものです。いまの自分を評価し、ほめそやしてくれる人が「いい人」。いまの自分に意見をしてくる人は「面倒くさい人」「いやな人」。

でも、いいことばかりを言ってくれる人というのは、こちらの人生に対する責任がないからこそ、いいことばかりを言ってくれる。そんなことも多いのです。

波風が立つような、いやなことを指摘して言ってくれる人というのは、大人になればなるほど、減ってきます。それでも「あなたはいま、間違えてはいけないよ」「舞い上がってはだめなんだよ」と、耳に痛いことを言ってくれるのは、自分や自分たちの未来をきちんと考えてくれているからこそなのです。

56歳で起業、75歳で高校を設立した90歳の美容研究家が「耳が痛いことを言ってくる人を憎んではならない」と説く理由_3
すべての画像を見る

自分にとってどうでもいい人には、人は何にも言わないものです。どうでもよくない、大事な人だからこそ、だめなこと、いやなことも指摘してくれるのです。「ほんとうにやさしい人」が誰なのかを見誤ってはいけません。

そしてまた、自分がまず大切にしないといけないものは何かを、きちんと見極めてほしいと思います。

間違っても、耳が痛いことを言ってくれる人を、憎んではならないのです。


写真/shutterstock

少しよくばりくらいがちょうどいい
小林照子
少しよくばりくらいがちょうどいい
2025/3/6
1,650円(税込)
256ページ
ISBN: 978-4763142023
 
amazon