幸せは身近なところにあるもの
私は少女時代から、「いつか演劇のメイクアップを仕事にしたい」という夢を持っていました。そのためにはまず東京の美容学校で勉強をしたい。
でも、家計を支える必要のある私には、そんなことは夢のまた夢。その頃の私は、母校の小学校で「給仕」として働きながら、併設された高校の分校で勉強をしていました。
給仕というのは、先生たちにお茶をいれたり、授業の準備を手伝ったり、いわば雑用をすべて処理していくのが仕事でした。安くても毎月お給料がもらえるので、私は一生懸命でした。
でも、自分と同年代で、勉強だけに打ち込める人たちが少しだけうらやましく思えました。私だって、自分のやりたいことに打ち込むことができたら。そう思ったときに鏡に映った自分の顔をいまでも忘れることができません。他人の人生をうらやみ、嫉妬する顔はほんとうに醜いものでした。私は激しい自己嫌悪に陥り、二度とこういう感情を抱くまいと思いました。
人はどうしても、自分と他人とをくらべて幸せを推し量ってしまうものです。自分が不幸だと決めつけている人、自分がいま何を望んでいるのかわからない人ほど、その傾向があると思います。
他人のほうが自分よりも楽しそう。他人のほうが自分よりも「いい人生」を送っていそう。他人とくらべて自分の人生はなんてつまらないのだろう、なんてみすぼらしいのだろう。そういう妬みの感情はどんどん負のスパイラルを生みます。
人間は多面な感情を持っています。ですから、負の面でつきあっていると負の面を引き寄せてしまいます。でも、そもそも幸せとは、人と比較して決めるものではありません。自分自身が決めることです。そして案外、幸せは身近なところにあるものなのです。