どんなことが起きても、カッとなってはいけない

かつては私も貧しい生活を強いられました。でも、養父母と3人そろって暮らすことができたわけですし、毎日の食事も十分足りていました。そして、子どもの頃から農作業を手伝ってきたからこそ、日本の四季の移り変わりに敏感になることができたのですし、自然の美しさをこの目に焼きつけることができたのですから。

私たちはすでに十分幸せなのです。妬みや恨みにとらわれているときは、なかなかそんなことに気づけないものですが、私たちの身のまわりには、小さな幸せがそこかしこにたくさん落ちています。戦争で亡くなった人たちがたくさんいるのに、私たちは生きている。

今日の食べものに事欠く生活を強いられる人たちが世界にはたくさんいるのに、三食、ごはんをいただいている。ほんとうはありがたいことだらけの世の中で私たち日本人は生きていて、生かされているのです。

若い頃は悩んだり、苦しんだり、妬んだり、恨んだり、そういったさまざまな感情をむしろ経験するべきだと思います。でも、歳を重ねるごとに、自分の人格のステージを少しずつ上げていきたいものです。

私も聖人君子ではありませんから、嫉妬する気持ちがわいてくることだってもちろんあります。でも、醜い感情がわいてきたときには、「あ、年甲斐もなく嫉妬しているな」と思って、身のまわりの幸せを思い浮かべてみる。

好きな人たちと楽しくごはんを食べる予定を立ててみる。そんなふうに知恵を絞って、負の感情を正の感情に置き換えていく練習をするのです。

「幸せは人と比べて決めるものではない」90歳の美容研究家が嫉妬の感情を断ち切れるためにしていること_3
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どんなことが起きても、カッとなってはいけません。自分の人生のかけがえのない大切な一日が台無しになります。

私たちはいま生きているだけでも、十分に幸せなのです。

「嫉妬」という醜い感情との縁を完全に断ちきったとき、人は心の中で、すがすがしい高みに登ることがきっとできるのだと思います。

写真/shutterstock

少しよくばりくらいがちょうどいい
小林照子
少しよくばりくらいがちょうどいい
2025/3/6
1,650円(税込)
256ページ
ISBN: 978-4763142023
 
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