居酒屋需要は2019年比で8割に満たず

日本フードサービス協会によると、2024年のパブレストラン・居酒屋の売上高は前年比105.5%だった(「JF外食産業市場動向調査」)。堅調に回復しているように見えるが、この数字を2019年との比較で計算し直すと75.1%となる。飲食需要がコロナ禍から回復しても、居酒屋の売上はいまだ8割にも達していないのだ。

しかも、牛肉や野菜などの食材費は高騰。アルバイトの時給も上がり続けている。「TOWN WORK」を運営するジョブズリサーチセンターの調査によると、2024年12月の三大都市圏の平均時給は1219円。2019年12月は1089円だった。

つまり売上が回復しないうえに、インフレで食材費や店舗運営費の負担は重くなっているのだ。そこにコロナ支援策の縮小・終了が加わってゼロゼロ融資の返済が開始。キャッシュフローが回らなくなる事業者が続出しているというわけだ。

しかし、資本力がある上場企業の稼ぐ力は戻り始めている。特に客単価が低い店舗や専門店を運営する企業の好調ぶりが目立つ。

「鳥貴族」を運営するエターナルホスピタリティグループは、2024年7月期の営業利益が前期の2.3倍となる32億円、純利益は3.5倍の21億円に急回復した。鳥貴族は低価格の大衆居酒屋を展開しており、大人数での宴会への依存度が比較的少ない収益構造をしていた。実際、2023年7月期からすでに黒字転換を果たしている。

低価格の大衆居酒屋の代表格「鳥貴族」(撮影/集英社オンライン編集部)
低価格の大衆居酒屋の代表格「鳥貴族」(撮影/集英社オンライン編集部)
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「ワタミ」の国内外食事業、2025年3月期上期におけるセグメント利益も前期のおよそ1.6倍の7億円に回復した。2019年3月末に480あった店舗を2024年9月末には319までスリム化。ワタミは宴会への依存度がやや高い店が多かったが、需要の変化で不採算となった店舗の閉鎖や業態転換を急ピッチで進めたのだ。

「塚田農場」のエー・ピーホールディングスは2025年3月期上期に1500万円の営業利益を出し、黒字転換を果たした。「塚田農場」も宴会需要の受け皿という色合いが強い店舗だったが、会社全体で鮮魚や地鶏、ホルモンなどの素材を活かした専門業態の出店を強化。宴会に強い居酒屋からの脱却を図っている。

「テング酒場」のテンアライド、「庄や」の大庄、「はなの舞」のチムニーも黒字化した。