ジャンプ編集部からも当初は「ウケないんじゃないか?」と…『ジョジョの奇妙な冒険』荒木飛呂彦が明かす最大の敵“ディオ”のキャラ設定秘話
漫画『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズをはじめとする荒木飛呂彦作品に登場する名悪役たちの魅力とリアリティはどのようにして生まれるのか? これまで語られてこなかった漫画家・荒木飛呂彦の「企業秘密」を掘り下げた書籍『荒木飛呂彦の新・漫画術 悪役の作り方』が話題だ。
本記事ではジョジョ・シリーズ序盤の最大の敵であるディオ・ブランドーの設定秘話をお届けする。
荒木飛呂彦の新・漫画術 悪役の作り方 #1
『ドラゴンボール』『キン肉マン』『シティーハンター』
次は家族関係です。実際に漫画には描かないとしても、僕がキャラクターを考えるときは必ず「この人はどういう生い立ちなのかな」と想像するようにしています。
ジョナサンは貴族の息子で、母親が早くに亡くなったこと以外は、何不自由ない境遇にいますから、対するディオは貧しい、悲惨な家庭に育ったということにしました。母親が早くに亡くなったことはジョナサンと共通していますが、ディオの方はアルコール依存症の、どうしようもない父親からDVなども受けています。
ただ、それだけではまだ何かが足りない感じがしたので、「ひどい父親は嫌いだけど、お母さんは好き」となりがちなところを、「あんなおぞましい父親に尽くした母のことも軽蔑している」という設定にしました。このあたりのディオの心情は漫画では描きませんでしたが、描かれていない部分も「こんなとき、ディオならどうするか」と考える際の大事な情報になるのです。
そんな不幸な生い立ちに負けずにのし上がっていくディオですが、それができるのは単にハングリー精神が旺盛というだけではなく、何か突き抜けた才能があるということにすれば、さらに「かっこいい」キャラクターになります。そこで、学校には通えなかったけれども、通う必要がないくらい抜群に頭がいい、天才的な少年という要素も付け加えました。
続けて埋めていったのが、「性格」の項目です。「ウソと虚飾」「次に支配」「そして排除」などの言葉が並んでいますが、要するにディオはパラサイトなんです。
自分の本心を隠してジョースター家という貴族に寄生し、奪えるものを奪いながら、乗っ取っていく。そのときジョナサンが邪魔なので、排除しようとするわけです。そこから、ジョナサンとディオの戦いが始まっていきます。
そうやってディオのキャラクターをだいたい作ったところで入れていったのが、吸血鬼の世界観でした。
なぜ「吸血鬼」だったかというと、当時の『少年ジャンプ』は『ドラゴンボール』『キン肉マン』『シティーハンター』などヒット漫画の名作揃いで、その中で自分の個性を出していくには、『ジャンプ』ではほとんど誰もやっていないダークな世界を描いてみるのがいいのではないか、と考えたからです。
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編集部からは「そういうのはウケないんじゃないかな」と言われましたが、そもそも僕が描きたかった「自分には身に覚えがない、先祖からの因縁で敵が襲ってくる恐怖」は、イケイケの明るい世界観とは水と油です。
もし、「やっぱり明るい世界観じゃないとダメかな」と自分を曲げていたら、『ジョジョ』のキャラクターと世界観が融合せず「なんかしっくりこない漫画」になっていたでしょう。
「絶対に譲れない」と自分の想いを貫いて、「吸血鬼だったら、不老不死だよね」「ディオなら、こういうセリフを言うだろうな」と、いろいろな要素を融合させていき、出来上がったのが、ディオというキャラクターでした。
漫画・表/書籍『荒木飛呂彦の新・漫画術 悪役の作り方』より
写真/shutterstock
2024年11月15日発売
1,034円(税込)
新書判/224ページ
ISBN: 978-4-08-721338-6
◆内容紹介◆
世界の16の国と地域で翻訳刊行されるなど、いまや古典となった『荒木飛呂彦の漫画術』(集英社新書)から10年。だが、ある時、『漫画術』を読んで漫画家になった人もいるとしたら、「もうちょっと深い話も伝えておかなければならないのではないか」と、荒木は考えた。
『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズをはじめとした荒木作品に登場する名悪役たちの魅力とリアリティはどのように生まれるのか? 漫画の王道を歩み続けるために必要なことは?いまだ語られなかった、漫画家・荒木飛呂彦の「企業秘密」を掘り下げた、新・漫画術。
◆目次◆
第1章 漫画の「基本四大構造」を復習&さらに深掘りする
第2章 超重要! 悪役の作り方の基本
コラム 『ジョジョ』歴代敵キャラについて
「悪役の作り方」実践編 その1 岸辺露伴の担当編集者・泉京香の作り方
「悪役の作り方」実践編 その2 一から悪役を作ってみる
第3章 漫画の王道を歩み続けるために
番外編 『The JOJOLands』第1話とコマ割りについて
ほか、ディオ、吉良吉影、ヴァレンタイン大統領の身上調査書も公開!
2024年12月18日発売
572円(税込)
新書判/184ページ
ISBN: 978-4-08-884298-1
ルルちゃんの「バグス・グルーヴ」により負傷したウサギを治療するため病院を訪れたジョディオ達は、HOWLER社が差し向けたもう一人の追っ手、ボビー・ジーン捜査官に遭遇する。スタンド2体による同時攻撃に防戦を強いられるジョディオは…!?
JOJO magazine 2024 WINTER
荒木飛呂彦
2024年12月18日発売
1,980円(税込)
B5判/304ページ
ISBN: 978-4-08-102425-4
“JOJO”を愛する全ての人に贈る…1冊全部JOJOの本第4弾!!
描き下ろし
★荒木飛呂彦[カバーイラスト]
巻頭企画
★荒木飛呂彦×ステンドグラス
★『続・荒木飛呂彦の漫画術 EXTRA TALK』
特集
★JOJOで描かれる女性たち
★暗殺チームのすべて
スピンオフ漫画
★うすた京介[間田敏和の微妙な冒険]
★西尾維新×出水ぽすか[魔好青年ビーティー]
スピンオフ小説
★尾北圭人[オレ自慢の針と糸]
付録★JOJO magazineスペシャルステッカー2枚組
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