「外注」でできること、できないこと

こうした改革を経て、2024年度はすべての委員会を廃止し、ボランティア制に切り替えた。その代わりに役員を増やした。行事があるたびに、必要なボランティアを募集する。

もし、熱心で有能な役員が集まらなかったら、どうなるのだろう。別のPTA役員の経験者に聞いたところ、役員が辞めるときに後継の人を探し、声をかけて確保する学校もあるという。

「役員候補がいなくなった場合には、学校のさまざまな活動をミニマムでやるしかない。例えば運動会の運営は、先生方がたくさんいる学校の場合は、PTAがいなくても回ると思う。

でも人員が足りなかったら、児童の競技や活動が減る。役員になりたい人が減って、結果的に行事を縮小し、広報誌もなくなり、記念品とか備品も買う余裕はありませんとなれば、『やはりPTAは必要だ』という理解が広がるのではないでしょうか」(Aさん)

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PTAの委員会を廃止しても、保護者のサポートは必要だというAさんの意見もうなずける。前出のPTAの役員も、「ボランティア要員をなくしたら防犯上よくないし、観覧の整理もできません。学校に協力しようという気持ちがない保護者は、そうした事情を知らずに、行事を安全に楽しんでいるんですよ」と話す。

PTAには、活動を外注したらいいという意見も寄せられる。

「でも、学校の先生とのやり取りやコミュニケーションは外注できないし、子どもたちのプライバシー保護もあります。皆さんが言う『外注』は、広報誌を作るとか、運動会の運営を委託するとか、活動の一部分なんですよね」(Aさん)

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先生の働き方改革や共働きの増加など、ジレンマを感じる変化もあるという。

「共働き家庭が増えた今、働いている保護者が参加できないPTA活動では困るので、そこが次の課題です。正直に言うと、専業主婦や自由業の方に頼っている現状があるわけです。

それに、先生の働き方改革も関係しています。先生方とのやり取りは、朝9時から夕方5時の間。先生は早く帰らなければいけない。でもPTAの役員会は夜にやりたい。なので、役員会は基本的には平日なんです。そうすると出席できる人は限られてきます。

役員のメリットの一つは、学校とつながれること。校長、副校長と直接コミュニケーションをして、考えていることや状況を聞けます。それをまたほかの保護者に伝えるというふうに、学校と関わってつなぐ役割なんです。

役員やボランティア活動で出会うことによって、地域でのつながりが増えてきます。それが生活のしやすさであり、子どもにそうした大人の背中を見せるのも大切だと思います」(同前)

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班 なかのかおり