「やっぱり今の状況は寂しい」
その当時も、依然として宴会での過激サービスは健在。裸で踊ったり、太ももと下腹部にできたくぼみに酒を注ぎこみ、自らを酒器とする「わかめ酒」も定番だったというが、そうした置屋商売も2016年を最後に姿を消した。
「(伊勢志摩)サミットが原因やな。島外も警察の検問だらけになったからな、就労ビザの関係でタイ人はみんな逃げていったで。もちろんお客さんもビビッて来ないわけやから、業態としては完全に終わったんよ。
もしかしたら今も、馴染みさんが訪ねてきて『私しか相手する子おらんねん』みたいな感じで(売春を)することはあるかもしれんけど、私が知るかぎりではこの島も本当にクリーンになったで。まぁ当時の盛り上がりを知っているぶん、寂しさもあるんやけどな」
その後も取材を続けるなかで、サツキさんのように過去を懐かしむ島民も少なくなかった。70代の女性も、「やっぱり今の状況は寂しい」と肩を落とす。
「当時はな、置屋が並ぶ通りを歩くと肩が当たるくらい人が押し寄せとった。もちろんアレ(売春)目的で、世間的にはいけないことをしとるのはわかっとったけど、毎日がお祭りみたいで楽しかった。それが今ではな、観光客は少ねえし、島にいるのは私みたいな年寄りばかりよ」
60代の男性も、「もうこうなったら、どこかの大企業が島を丸ごと再開発してくれるのを待つしかないんちゃう?」とあざけり笑う。
「結局のところ、ずっとそういう商売(売春)に頼ってきたからツケが回ってきたんちゃう? こんな状況だからな、周りの年寄り連中も『昔の方がよかった』とか嘆いてるで。オレも兄ちゃんと一緒に島を出たいくらいやわ」
それでも島には踏ん張り現状を変えていこうとする人たちもいる。はたして渡鹿野島が行き着く先とは――。小型船で本土に戻る途中、空はどんよりと曇っていた。
取材・文・撮影/神保英二
集英社オンライン編集部ニュース班