統一教会に「いやがらせ訴訟」をされたが勝訴
藤井(2024年)3月12日、統一教会からのスラップ訴訟に関して、ようやく教団側の請求が棄却され、有田さんの勝訴で終わりました。損害賠償請求に該当しないという裁判所の判断でした。
私はその裁判の事務局のお手伝いをさせていただいていて、この1、2年、よく喫茶店で「どうしようか」と密談しましたね(笑)。それから呼びかけ人を集め、寄附も募り、インターネットでいろいろな呼びかけもし、ほぼ手弁当で超強力な弁護団もついてくれて。それでも経費はかかるので、そのお金を集めるために奔走した日々でした。有田さんは裁判が終わって率直にどう感じていますか。
有田 まずそのスラップ訴訟、「いやがらせ訴訟」をされるまでの話をしておきたいです。
2年前の7月8日に安倍晋三元首相銃撃事件があり、奈良市の近鉄・大和西大寺駅前で撃たれて亡くなりました。
実行犯の山上徹也は、お母さんが1991年に統一教会に入信。おじいさんが建設会社を経営されていて、いわば資産家家庭だったのですが、統一教会にお母さんが1億円を超える献金をしたことで家庭が崩壊し、大学に進学したかった彼も諦めざるを得なかった。
彼のお兄さんは生まれたときからリンパ腫で、抗がん剤治療の副作用で片目を失明して、手術してもよくならず、神戸大学医学部附属病院で治療を受けたかったけれど、お金がなく、2015年11月に自殺してしまいました。
お父さんも1984年に自殺していて、その後、山上はお兄さんと、4つ下の妹さんと、お母さんと一緒に暮らしていたけれども、お母さんは信仰にのめり込んでしまって……。
それで彼は悩んで、広島県呉市の海上自衛隊で働くようになってから生命保険に入り、受取人を当時まだ生きていたお兄さんにして、山上自身も2005年2月に自殺未遂をしているんです。そういう背景があった。
安倍元総理銃撃事件が2022年7月8日で、3日後の11日に統一教会の田中富広会長が記者会見し、山上のお母さんが信者だったと認めたので、一気にテレビでも新聞でも報道が広がっていった。
そして僕がテレビに出るようになって、8月に日本テレビの『スッキリ』という朝番組に2日連続で出たときに発言したことが「名誉毀損である」と同年10月に教団から訴えられました。
訴えられた翌日から今日に至るまで、僕はテレビ出演が一切なくなった。だから、教団は訴えることで目的を達成してしまった。その意味で「いやがらせ訴訟」は彼らにとって成功だったのです。
藤井 この手のスラップ訴訟はたくさんあって、たとえば僕の音楽ライターの友人もJASRACの問題点を雑誌でちょっと書いた程度でJASRACから訴えられ、2人なんですけど、莫大な金額を要求された。友人は長い時間の末、勝訴したのですが、裁判経費がものすごくかかり、精神が削られて疲労困憊してました。
今回は、有田さんを筆頭に、八代弁護士、紀藤弁護士、本村弁護士ら4人が統一教会から訴えられました。
有田 その日の日本テレビの『スッキリ』の特集は、東京都八王子市、選挙区で言うと東京24区から立候補している萩生田光一議員、安倍さんと非常に親しい彼が、統一教会とも非常に親しかったという事実が明らかになっていた。
でも萩生田さんはそれを曖昧にしていたんです。だから番組で僕は「そんな曖昧にしていていいんですか? 統一教会というのは霊感商法などもやっている反社会的な集団です。関係を断ち切らなきゃいけないんじゃないですか?」というふうに司会の加藤さんの横に立ってしゃべっていました。コメンテーターも4人ぐらいいて、萩生田さんと統一教会がテーマだった。
40分の特集の中で、僕のそのコメントはたった7秒です。裁判所は8秒だって言ってるけど。それについて「名誉毀損だ」と訴えられて、訴えられた翌日からテレビ出演がなくなったんです。
藤井 テレビも腰が引けてますよね。統一教会に訴えられたということ自体をニュースにするべきなのに、ここでも何らかの統一教会とずぶずぶの関係だった「政治の力」への忖度を考えてしまいます。