母が果樹園を売るなどして1億円以上も高額献金

中野容子さん(60代、仮名)は、亡き母が1億円以上の高額献金をする被害にあい、今も裁判を通して旧統一教会との争いが続いている。

政府が今回、解散命令を請求したことについて「請求を検討してからかなり時間も経っていたので、本当に出すのか心配だったが、やっと請求することになってよかった」と心境を吐露した。

だが、この解散命令請求は今後の旧統一教会のあり方を左右するものの、これまでの被害についての賠償などに直接影響を与えるものではない。
それでも、中野さんは「これまでの被害実態からも、教会は宗教法人格を持つべき団体ではない。解散命令によって、今後同じような被害が起きないようにしてほしい」と訴える。

中野さんの母が受けた被害とはどのようなものだったのか。
自分の母親が旧統一教会に1億円以上の献金をしていたことを中野さんが知ったのは2015年のことだった。

長野県にある実家は果樹園を営んでおり、2009年に亡くなった父は資産運用もしていたため、家には一定の財産があるはずだった。しかし、母は父の死後からみるみる元気がなくなり、時折、お金に困った様子も見せるように。
中野さんは父が晩年、資産運用に失敗してお金がなくなったのかと思い込んでいたが、父の七回忌の際に改めて母にそのことを聞くと、「旧統一教会に全部寄付しちゃった」との思いもよらない答えが返ってきた。

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話を聞くと母は親族の紹介で、2004年ごろに旧統一教会に入信。
霊感商法によって不安をあおられ、自分の資産だけでなく父の資産にも手をつけたほか、大事にしていた果樹園まで売って総額1億円以上を寄付してしまっていたのだ。

驚いた中野さんは2015年11月下旬に弁護士へ相談。しばらくは返還に向けて教会側と直接交渉をしたが、教会側は「不起訴合意が成り立っている」と一切応じなかった。
その証拠として見せてきたのが、母が寄付や献金について「私が自由意思によって行ったもの」として署名、押印したという念書だった。

念書には「返還請求や不法行為を理由とする損害賠償請求など、裁判上・裁判外を含め、一切行わない」という内容や、「寄付等について必ずしも快く思わない私の親族らや相続人らが、後日無用の紛争を起こすことがなきよう、私の意思をここに明らかにする」といったことまでわざわざ書かれていた。
結局、直接交渉ではらちが明かず、この献金問題は訴訟にまで発展することとなる。